ともに生きる・福祉のページ
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や地域の人たちの活動や話題をリポートします。


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京都〈臨床美術〉をすすめる会


 絵を描くことを通して、認知症の症状を改善したり、子どもたちに自信を持たせる臨床美術の取り組みが、各地で行われている。絵を描き、コミュニケーションを図るなかで脳の活性化が促され、楽しさや生きる意欲がわいてくるという。京都〈臨床美術〉をすすめる会(代表・フルイミエコさん)は、まだあまり知られていない臨床美術を広めようと、普及活動を進めている。


絵を描き脳を活性化 認知症などに効果



 3月末、下京区のひと・まち交流館京都で「心と体がめざめる美術とは」とのタイトルの講演会が開かれた。会場は約200人の来場者でほぼ満員の盛況。講師の臨床美術士、木村聡美さんが臨床美術の紹介から、埼玉県の春日部市立幸松小学校での取り組みをリポートした。

 講演の中で、来場者にも簡単な絵を描いてもらい、互いにその絵について話しあう場面があった。木村さんのリードで描くそれぞれの線が絵に仕上がっていく。その絵をもとにコミュニケーションすることで、感じたことを言葉にしてつたえる。「上手下手という評価をしない」「ほめるようにしてください」。木村さんが会場に伝える。話しあううち和やかな雰囲気が広がった。

 幸松小の取り組みは140日。臨床美術を体験することで、児童たちは絵を楽しく創作し、コミュニケーションの言葉も豊かになったという。同校の公開授業を参観した先生からは「人を否定しないコミュニケーションが安心感を与え、やる気を出させる」「自分の良さを認めてもらう喜びが感じられた」などの感想が寄せられた。

 この講演会を主催したのが、京都〈臨床美術〉をすすめる会。代表のフルイさんは私立高校の美術講師をしながら、自宅でも子どもに絵や工作を教えている。美術を通して心や体を健康にする取り組みに関心があり、日本臨床美術協会(東京)の講座を受講、准臨床美術士の資格を取得した。臨床美術を学ぶうちに、絵を描くことが楽しくなる▽コミュニケーションが活発になる▽右脳を活性化させる―という効果を実感し、この活動を普及させようと、臨床美術士の資格を持つ仲間と昨年11月、会を設立した。会では現在、ワークショップや講演会を開いて、一般の人に臨床美術を知ってもらうことから始めている。

 臨床美術は認知症の改善に効果があるというデータがあり、その取り組みが各地の病院や施設でも行われている。京都造形芸術大では、日本臨床美術協会の協力で今年度から初めて臨床美術士養成講座を開講することになった。

 フルイさんは「絵が苦手という意識をなくし、だれでも絵を楽しめるカリキュラムにあふれている。美術を福祉の現場に取り入れるコーディネートをしていきたい」と意欲をみせている。


<メモ> 京都〈臨床美術〉をすすめる会 代表 フルイミエコ
京都市西京区御陵峰ケ堂町3−18−2。会員45人。TEL・ファクス075(331)8967 メール