ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や地域の人たちの活動や話題をリポートします。

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BIG TREE



 アウトドアの遊びを通して、障害のある人もない人も、子どももお年寄りも交流できる場づくりをめざすNPO法人(特定非営利活動法人)BIG TREE(京都市上京区、新堂早代代表)は、今年10周年の節目を迎えた。障害のある人たちが、カヌーや山登り、温泉旅行などを体験するほか、絵を描いたり、パーティーも開いて生き生き暮らしている。この10年、障害のある人たちが施設や家から外へ出て活動の場を広げ、社会の理解も深まってきたという。


野外体験 障害者が交流

 5月26、27の両日、南丹市美山町でBIG TREEが主催する「美山別荘計画25」と題するイベントが行われた。参加者は障害のある人5人、スタッフ4人。初日は、京都、奈良から移動し、みんな一緒に貸し農園でサツマイモの苗を植えた。9月には収穫を予定している。2日目は芦生へハイキング。しっかり1人で歩ける人、介助の必要な人の2班に分かれ、新緑に包まれた山中をそれぞれのペースで歩き、自然を満喫した。

 これは知的障害のある人を対象とした遊びの一つ。ほかにも、今年は、「さぬきうどんツアー」「島で暮らす」などを計画している。もう一つ、障害のある人とない人が交流できる参加体験型のアウトドアプログラムもある。例えば本年度は「しまなみ海道―自転車と温泉の旅」「いるかと泳ぐ旅」「那珂川カヌーの旅」など。この2つの企画(有料)がメーンとなっている。

 BIG TREEは1997年に設立。代表の新堂さんは、大学で野外教育を専攻し、卒業後、奈良の福祉施設に入り、障害者とアウトドアを結びつける活動をしていた。しかし、施設内で行う活動に限界を感じ、同団体を作った。「自分自身が自然の中でチャレンジし、障害のある人とかかわるなかで成長できた。そんな場を多くの人に提供したい」というのが動機だった。

展示など文化活動も

 現在、知的障害のある人の登録数は京都、奈良、大阪の約30人。ボランティアスタッフは20人。新堂さんとスタッフが打ち合わせをして、ほぼ毎月、イベントを組んでいる。基本となる考えは「アウトドアスキル(技術)を身につけることが目的でなく、人と出会う機会の少ない障害のある人たちが、遊びや出会いを通して可能性を広げる」こと。

 イベントのほかに、「大木庵」と呼ぶ民家を改装したフリースペースで、展示や会合、教室などを開いて交流している。また、年4回機関紙も発行している。

 活動を始めたころは、有料のイベントが理解されにくかったが、最近は障害のある人へのサービスや支援の考えが変わってきた、という。新堂さんは「10年で蓄積してきたノウハウがある。これを生かして、ほかの団体などとネットワークを組み、活動の幅を広げたい。そしてもっと多くの人に、障害を超えた交流の場を提供したい」と話している。

<メモ>NPO法人BIG TREE
連絡事務所・下京区河原町通仏光寺上ル市之町250 タキイビル コーチングラボウェスト内。
TEL075(354)9228