ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
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まいづる福祉会・ほのぼの屋


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明るいレストランで、障害のある人たちが生き生き働いている(舞鶴市大波下)
 舞鶴湾を望む静かな高台に、レストラン「ほのぼの屋」はある。障害のある人たちが働く授産施設としてオープンして5年。料理の味、行き届いたサービス、落ち着いた雰囲気が評判となり、地元以外からも多くの客が訪れる。昨年、すぐ隣に宿泊施設を併設するまでになった。「普通に働き、暮らしたい」。障害者の願いを、地域社会の中で実現したレストラン経営が注目されている。

授産施設のレストラン 味とサービス評価高く
 「ほのぼの屋」のドアを開けると、白いシャツ、ちょうネクタイのウエイターが迎えてくれる。吹き抜けの室内には、高く大きな窓。その向こうに、湾内に浮かぶ小島や小高い山が見える。昼時、京都から来たという2人連れの女性客は「ロケーションがいいし、料理もおいしい。また来たい」と笑顔で語った。

 店がオープンしたのは2002年4月。本格レストランだが、正式名称は「ワークショップほのぼの屋」。社会福祉法人まいづる福祉会(黒田隆男理事長)が運営する授産施設である。

 同福祉会は障害者の共同作業所を長年、運営し、「障害者自身が働き、自立する」ことを目標にしてきた。その中で施設、病院、自治体などの関係者らとのネットワークを築き、「障害者が暮らしやすい町づくり」へ取り組んできた。また、1年間に及ぶ6回連続フォーラムも開催、さまざまな角度から地域の理解と支援の輪を広げる努力をしてきた。

 そうした活動を基に、自立の第一歩として取り組んだのが古本屋。この商売を通して客との交流を経験し、職員や働く障害者に自信ができた。次にレストランが候補にあがった。「やる以上は、味とサービスで勝負できる店を」。シェフには京都の大手ホテルで総料理長をしたことのある人を口説いて来てもらった。接客の研修も重ねた。

 現在、調理・厨房(ちゅうぼう)、接客のほか裏方の清掃、洗濯などに、1日のべ20人ほどが働いている。昼のランチから夜のディナーまで本格料理で客を迎える。施設長の西澤心さん(45)は「スタッフも障害のある人もがんばってきた。評判を聞いて全国から来てもらっています」という。経営は順調で、障害のある人の給料はレストラン部門で約10万円になる。

 昨年10月には、宿泊施設「オーベルジュ・ド・ボノ」をオープンした。南仏のプチホテル風で、客室は1、2階に各1室。「レストランとあわせ、居心地のよい施設にしたい」という。

 同福祉会は、このほか地域生活支援センター、作業所、米屋なども運営している。前身のまいづる共同作業所を開所してから30年。同福祉会の理事でもある西澤さんは「障害のある人たちが働き、自立していけるように、地域の人たちと一緒にやってきた。地方で就労の場を作ることは容易ではないが、しっかり耕せば可能だということを発信していきたい」と、力強く話していた。

<メモ>まいづる福祉会・ほのぼの屋
舞鶴市大波下202―56。TEL0773(66)7711