ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。

まちかどプロジェクト


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自分たちの体験を元にした劇を演じるまちプロ一座の練習風景
 大津市の従来型作業所まちかどプロジェクトは、障害者を中心にした演劇グループ「まちプロ一座」を4年前に編成、ユニークなステージ活動を展開している。自分たちの生きてきた経験を元にして劇をつくり、福祉や人権など本格的なテーマをユーモアを交えながら訴える。年間20公演を数える活躍で、演技の巧拙を超えて伝わるヒューマンな感動が波紋のように広がっている。

人間味ある感動広げる
 同作業所は7年前に設立され、現在、身体障害者7人、スタッフ3人、ボランティア4人。主な仕事としては、車いす体験学習や研修などへの講師派遣、バリアフリーをテーマとしたまちづくりの活動、組みひも、ビーズやアクセサリーなどの手作り工房、さらに演劇活動を加える。通常の作業所とは異なる仕事の領域へ挑戦している。

 この中で、最近はまちプロ一座の活動の比重が大きくなっている。メンバーは同作業所の利用者、スタッフのほか社会人も加わり総勢23人。演者たちは7、8年前から派遣講師として、それぞれ紙芝居や一人芝居などの経験があるものの、演劇の経験まではなかったという。座長の太田好信さんは「自分には言語障害があるので、講演などに出かけても、なかなか自分の思いが伝わらない。そのカベが課題だったが、全身で表現する演劇だとうまく伝えることができるのじゃないかと考えた」と劇団設立の動機を語る。

障害者らが演劇公演
 公演は地元滋賀が主だが、京都、大阪、兵庫などへ広がり、小中学校や保育所、自治会や行政の研修や催しなどへ出演している。現在、手持ちの演目は5つ。障害を持ちながらも地域に住みたいと一人暮らしを望むことに家族の反対がからむかっとうや同級生への恋など、実話を軸にした仕立て。そのなかで「障害者雇用促進法」や福祉問題などシリアスな主題を取り上げるが、ジョークや笑い話を交えながら進行する。その間、不自由な身体ながらも懸命なダンスやパフォーマンス、時には字幕が出るとつとつとしたせりふ、車いすに乗っての振る舞いなど、演技上では一般の劇団レベルには及ばないだろうが、座員たちの伝えたい思いは、かえってひしひしと心に迫ってくる。

 永野朝香さんは交通事故の被害により14年の病院生活を経て、現在一人暮らしをしているが、「舞台に立つのは恥ずかしい気持ちもするけど、いろんな人に出会えるのが楽しい」。そして「車いすで外出して多くの人と接するなかで町が変わっていくのでは」と、地域住まいの意義を唱える。

 作業所のスタッフもそろって演出、照明などを担当しているが、所長の橋本久恵さんは「障害者が主人公となっている劇団は県内では唯一です。演技だけでいえば、必ずしもうまいとは言えませんが、見る人に感動と元気をあたえることができる、不思議な力をもっているんです」と話している。

<メモ>まちかどプロジェクト
大津市大萱1―16―11 TEL077(543)2799