ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
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知的障害者授産施設「瑞穂」


 大津市内の知的障害者授産施設「瑞穂」は、28年前の発足当初の家庭的な雰囲気を、今なお伝えている。7年前には社会福祉法人へ組織替えし、1軒の民家が近代的な鉄骨2階建ての大型施設に建て替わった。また利用者は当初の3人から40数人へ大幅に増えた。それでも「家庭は人を育てる場であり、なんとか、その良さを大事にしたいものです」と施設長の元藤大士さんは、歩みを振り返っている。

写真
「瑞穂」の名物作品の木版カレンダーを手作りする
利用者やボランティアたち
「家庭的雰囲気」大切に


 設立は1978年、里親をしていた元藤さんが大津市内の自宅を利用して設けた生活ホーム「瑞穂」へ、さかのぼる。その翌年には、住む家に次いで「どこか働く場を」と利用者、家族とともに共同作業所を設立。最初の利用者はわずか3人にすぎなかったが、里親と子どもの間柄を軸とし、まさに家庭的な作業所だったという。

 その後、森永ヒ素ミルク事件の後遺症者を含めて利用者が増えつづけ、作業所がしだいに手狭になり、4回も転居。同時にケアハウスやグループホームを同市内に建設し、利用者の仕事と生活を網羅したシステムを築いている。

版画作品 人気高く


 現在の仕事は、下請け、工芸、版画、食品、事業、営業活動という6部門に渡っている。他の作業所ではあまり例がないのが版画で、瑞穂の自慢の部門。その作品で最も人気が高いのがカレンダー。2カ月1枚ずつ木版画を掲げていて、いずれの絵も16版ほど刷りを重ね、手の込んだ芸術作品並みのできあがり(1部3000円)。他には年賀はがき、ポストカードも木版で注文を受けている。

 また食品では無添加みそ、クッキー、マーマレードを作り、事業面では市営住宅や介護施設の清掃、布団乾燥、寝具丸洗いなどへ進出。工芸ではさをり織り、陶芸。下請けでは封筒詰め、シール張りや箱折りなど多種に及んでいる。

 一方で同作業所の特色ともなっているのが月2回の定例の募金活動。1980年の「カンボジア難民支援」の募金に利用者が立ちあがったのを契機に始まり、以後、毎月欠かさず継続している。その間、支援コンサートも断続的に開き、この収益金とともにアジア各国の現地に毎年、出かけて募金を届けている。

 また地域との連携にも力を注ぎ、年2回のみずほ祭、みずほふれあいまつりには地元の商店が模擬店を出し、バザーへ協力するなど地域とのつながりが強い。さらに後援会の会報は全国へ2000部送付するまで広がった。

 元藤さんは現在も自宅で里親を継続中で、隣のケアホーム大空とも連携するなど多忙な日々。「昼間に仕事をする前に毎日の生活が整わないと、どうにもならない。その点でグループホームやケアホームの支援費が削減されるのは理解しにくい」と、障害者自立支援法の問題点を指摘。そして「家庭とは違った施設であっても、家庭の持つ良さを忘れずに、互いに学びあって生きていきたいものです」と話している。

<メモ>知的障害者授産施設「瑞穂」
大津市中庄2ノ2ノ11 TEL.077(525)9520