ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


社会福祉法人パレット・ミル


 栗東市の郊外、金勝(こんぜ)山の豊かな自然環境のなか、社会福祉法人パレット・ミルが就労移行支援の事業所を構えている。設立から11年、最初の仕事だった木工のほか菓子製造、ブルーベリー栽培や、請け負い作業など幅広い仕事を引き受ける。6人から始まって、現在は計40人のグループに成長。障害を持つ人たちが、自分の力で働いて自立し、普通に暮らせる日々を―と当初の目標へ、着実なステップを刻んでいる。

写真
競走馬の使用済みてい鉄を
お守りに加工する利用者たち
自立を求め 仕事幅広く


 1996年、小規模作業所の自立就労センターとしてパレット・ミルが始まっている。当時、滋賀県内の共同作業所などの福祉的就労は平均月収が1万円ほど。これで自立するのは難しいのでは、と懸念した中山みち代さん(現所長)らが、最低賃金をめざしながら自立する選択肢の一つとして設立。当時、滋賀県のワークアドバイザーの勧めにより、フォークリフトの運搬作業に使う木枠(パレット)を検品・修理する仕事に障害者2人と職員の計6人で起業した。

 その後、さまざまな仕事へ間口を広げているが、仕事選びでは働く人や環境に負荷が少なく、他の施設と競合しない、さらに採算性があることを心がけてきている。木工のほかの仕事ではドライ・フラワーを瓶にアレンジするボトル・フラワー作りから、栗東トレーニングセンターの競走馬の使用済みとなったてい鉄を利用したお守り、組みひもによる携帯ストラップなどの商品を開発。市環境センターでのプラスチックゴミの選別など数社からの請け負い、パン店の開店、ブルーベリー栽培、菓子製造などに及んでいる。

 受注工場の移転や業務の変更などに伴い、パレットの仕事量が少なくなるなど仕事内容は、時々に変化せざるをえないが、「新しい仕事を常に増やしていきたい」と積極的な構え。

 この間、利用者・職員は当初の6人から現在、40人に成長。無給からスタートした収入が現在、月額平均約8万円へ。福祉就労と一般企業の中間までこぎつけている。

就労移行を支援


 一方、2年前にはグループホーム(定員5人)を設け、仕事と生活の両面を支援する環境を整えている。さらに昨年には多くの利用者と労働契約を結ぶ事業型作業所「パワフル」を新設。これが今春、さらに進化した社会的事業所へ移行している。

 中山所長は「初めは資金も土地も、設備も人も、なんにもなしでした。幸いにも空いてる木工所を借りることができ、48歳の私がフォークリフトの技能講習を急きょ受講するなど、木工の仕事を立ち上げました。その後も地元の方々や友人、知人が困っていると援助の手を伸ばしてくれて、ここまで来ることができました」と振り返る。「毎年、新人が先輩と共に仕事をすることで日々成長し、1年後には大きく成長しています。それがわたしたちの喜びです」と語る。

 働きたい。仕事と自立を求める人の期待に応えたい。そして1人でも多く最低賃金をクリアしたい―パレット・ミルの当面する目標である。

<メモ>社会福祉法人パレット・ミル
栗東市観音寺139 TEL077(558)4500