ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


恒河沙母親の会


 不登校や引きこもりの青少年の自立をめざすには、親も一緒に変わっていかなければ―と、特定非営利活動法人(NPO法人)恒河沙(ごうがしゃ)母親の会(福島美枝子理事長)はユニークな活動を続けている。京都市上京区に作った食堂には、そこで働く子どもやその母親、ボランティアの人たちが集まる。料理を作り、運び、にぎやかにおしゃべりも。居場所にとどまらず、就労や社会参加に向けた実践を重ねている。

写真
おしゃべりしながら食事し、
コミュニケーションを深める(京都市上京区・コミニテ食堂)
自立へ食堂を拠点 親子が働き学ぶ
 11月中旬の火曜日。上京区中立売通千本東にある「コミニテ食堂」には、昼前から若者や近所の主婦、支援する人たちが集まっていた。台所では調理を担当する女性2人がその日のメニューのカレーを作り、集まった人たちが食卓を囲んだ。食事をしながら談笑の輪が店内に広がった。

 食堂は昨年夏にオープン。引きこもりや不登校の子どもたちが、盛りつけや片づけを手伝うことで、就労へのステップにするとともに、地域住民ともふれ合う場となることをめざしている。

 代表の福島さんは、引きこもりの若者たちの自立を支援するもう1つのNPO法人恒河沙の理事長も兼ねている。恒河沙は、福島さんが大津市に開いた安養寺フリースクールから、2001年、青少年の自立を支援する組織として発足した。北区大宮釈迦谷で、京都、滋賀などの引きこもりや不登校の青少年が、農作業をしたり、大工仕事、自転車修理の補助、パソコン研修などに取り組んでいる。

 恒河沙母親の会をつくった経緯について、福島さんはこう話した。「恒河沙には、子どもを心配する母親も集まってくるようになった。本当に子どもが自立するには、親も子どもから離れないといけない。親もひっくるめて勉強し、学んでいくために作りました。これは実は『子どもから離れる会』なのです。

 現在、母親の会が運営するコミニテ食堂は、毎週月、火、木の3日営業。通りがかりや近所の人が食事によるほか、自立をめざす若者の母親や地域のお年寄り、子育て中の母親、支援する医師や弁護士らも集まってくる。子どもたちが育てた野菜も販売している。

 また、「きちんと子どもを育てる力をつけるために」勉強会もしている。最近では会を支援する菅野ゆりかさんが野村泰幸さんと共訳した「オーラフ 自閉症児が語りはじめるとき」(クリエイツかもがわ)という本を題材に学んでいる。

 コミニテ食堂に集まるさまざまな人たちと触れるなかで、子どもたちは仕事や家庭でのしつけ、人づきあいなどを学ぶという。福島さんは「ここのルールは一つだけ。暴言やあばれて人を傷つけないこと。働きたいときに働き、遊びたければ遊ぶ。好きにすればいいのです。型を作ってそこに子どもたちをはめ込むのではなく、子どもたちの様子を見ながら型をつくっていく。そうして自立の道を探す手伝いをしたい」と、おおらかな気持ちで、子どもらの成長を見守っている。



<メモ>特定非営利活動法人恒河沙母親の会 
京都市上京区中立売通千本東入ル田丸町379ノ3 TEL075(414)4192
恒河沙はガンジス河の砂という意味。無限の命の永遠なる連なりを表している。