ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


大津・宅老所はな


 比叡山・延暦寺の門前町の大津市坂本。穴太積みの石垣ぞいの一角に特定非営利活動法人(NPO法人)宅老所「はな」が新築・移転して2年を迎えている。高齢者福祉施設で働いていた経験を生かし、7年前、林淳子さんが、借家でほそぼそと始めたのが、その始まり。しだいに利用者が増え、また介護保険の適用を受けるとともに友人や知人がさまざまな形で協力して、地域福祉の新たな拠点へ発展している。

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懐メロや唱歌から言葉遊びなどに興じる利用者たち
個別ケア メニューを工夫協力で地域拠点に
 林さんは高齢者の特別養護施設で15年働いた経験とケアマネジャー、介護福祉士の資格をもつ専門家。定年前に退職し、利用者1人1人に一層行き届いた介護をめざして、平成12年、古い家を借りて自費を投じ、宅老所を開いた。

 1年後には地域の自治会や老人クラブなど関係者の協力を得てNPO法人を設立した。その後、デイサービスを定員8人で開始。ついで2年前に現在地に木造平屋建てを新築。敷地約400平方メートル、床面積約160平方メートル。ごく普通の民家と同様に畳の間に床の間を置き、障子やふすまの間仕切りなど純和風にこだわり、年配者に居心地の良い環境を配慮している。

 この間、林さんは友人や知人、元の同僚などから、それぞれ専門の分野のパソコン技術やNPO申請用の文書作成、各種事務など、さまざまな手助けを得て、施設の整備、充実が可能になったという。

 現在、通所介護の定員は13人。「だれもが楽しい時間と花を咲かせる場」を目的に掲げる。そこから個人を尊重した個別ケアの充実を心がけている。毎日の決まりきったプログラムを繰り返すのではなく、1人1人に見合うように、さまざまに工夫している。そのメニューの中には月1回の音楽療法や、四季ごとに楽しめる里坊、寺院の多い門前町内の散歩、転倒防止のオリジナル体操、言葉遊びやボール投げ、あるいは近くの小学校との交流や時事問題を話題にするために新聞の読み聞かせなど独自のメニューをそろえている。

 通常のデイサービスの一方、介護保険適用外のサービスとして延長ケア、ナイトケア(1泊・朝食付き)など行っている。介護保険でのこれらサービス利用には、事前申し込みや手続きなど必要とされ、急場に間に合わないことがある。その点を簡素化し、小回りの利く特性をいかして、利用者や家族の緊急のニーズに対応できるのが自慢という。それが「はな」開設の主たる動機だとしている。

 「利用者さんとご家族、そして私たちが同じ距離をとりながら、お互い信頼関係を築くのが、第一です」と林さんは、運営の基礎を確かめる。そして「毎日、定例のメニューではなく、生活に根ざした題材を探しながら、精神と体に刺激を与えることを大事にしています。その中で、どの人も必ず、主人公になって輝き、楽しい時間を過ごしてもらえるよう、スタッフともどもがんばっています」と話している。



<メモ>NPO法人宅老所はな 大津市坂本5ノ26ノ21 TEL077(578)6587