ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


京都南部の精神保健福祉を考える会かわせみ


 心の病がある人も、安心して暮らせるように―との願いで作られたのがNPO法人(特定非営利活動法人)京都南部の精神保健福祉を考える会かわせみ(宇治市、理事長・加藤博史龍谷大短期大学部学部長)。精神に障害のある人への福祉施策やサービスは、身体障害、知的障害に比べてまだ遅れている。「人として当たり前に暮らしていける」には、地域社会の理解と協力が欠かせないと、食事会や講演など地道な活動を続けている。

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心の病がある人や医師、ボランティアらが食事をしながら交流する(東宇治コミュニティセンター)
ふつうに暮らせる社会へ 市民の理解を広める
 昨年末、宇治市五ケ庄の東宇治コミュティセンターで、かわせみが毎月催す地域夕食会「まんぷく会」が開かれた。精神に障害があり、自宅療養を続ける人たちやボランティアで調理をする主婦、病院や保健所、共同作業所などの関係者ら20人近くが集まった。食卓を囲んで和やかに話し合いながら食事を楽しんだ。この日はテーブルにクリスマスプレゼントも用意された。9年間ボランティアで調理を続けている太田敏子さんは「みなさんが自然な形で食事を楽しんでもらえるように心がけています」という。

 かわせみの設立は1994年。長い間、精神障害者がかかえる多くの問題は、病院や医療の分野で考えることであり、福祉の問題としては受け止められてこなかった。93年に障害者基本法が施行されて、精神障害者へ福祉の光が当たるようになったのをきっかけに、病院や保健所、共同作業所などの関係者を中心に、会を設立した。

 「精神に障害のある人と市民とのパイプ役になる」との考えに基づき、食事会のほか、精神保健福祉の理解を広げるための市民講座や地域での研修会、研究活動などを行っている。12月22日には、奈良の精神障害者の男性の話を聞き、心の病について参加者らが話し合った。

 こうした活動の中で全国的にも注目されたのが、「コンパクト・パーソン方式」と呼ぶ障害者を支援する手法。北欧での活動を参考に、研修を受けたボランティアらが「友だち兼助言者」として話相手になり、社会的な孤立を防いで心の支えになろうとする。宇治市社会福祉協議会と共同で2000年から試行し、同社協が03年からはボランティアを一般公募して事業に本格的に取り組んでいる。かわせみ理事長の加藤さんは「この活動を通して、社会とのかかわりを回復している人が何人もいる」と、事業の成果をあげ、「制度として確立できれば」と今後の課題を指摘する。

 加藤さんは、精神に障害のある人たちに対する社会の理解は確実に深まっているが、それでもまだ偏見は少なくないという。このため、今後さらに一般市民との交流を進めたり、教育分野で子どもたちの理解を深める活動を続けたいという。加藤さんは、アメリカのカーター大統領の妻が、精神障害者がどのように遇されているかで、その社会の優しさが分かるといったという話を紹介しながら、「この視点が一番大事なことではないでしょうか」と強調した。



<メモ>京都南部の精神保健福祉を考える会かわせみ
宇治市木幡南端53ノ7 TEL0774(31)5088