ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


第26回滋賀県社会福祉学会


 福祉にかかわる多様な人が集まり、実践や意見を交わす第26回滋賀県社会福祉学会が、このほど草津市の県立長寿社会福祉センターで開かれた。フォーラム「つながりを問う―本当に安心できる福祉社会づくりに必要なこととは」のほか、6分科会で自由研究41題が発表された。

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「つながり」をテーマに開かれた滋賀県福祉学会のフォーラム
安心できる福祉社会を 課題解決へ意見交わす
 初めに鎌田昭二郎同学会実行委員長が「昭和57年に第1回を開き、福祉にかかわる人たちのモラル向上、スキルアップによる福祉向上をめざしてきた」とし、これまでの研究発表が1456題、参加者が1万人を超えたとあいさつした。

 次いで講師の和田敏明ルーテル学院大教授が、基調講演した。和田教授は、社会福祉法の改正により地域福祉が重要な位置にあると前置き。地域の課題として

▽制度のはざまで苦しんでいる人
▽既存の施策では応え切れていないニーズ
▽総合的な対応の不十分さから生じる問題


への取り組みを挙げた。その中で、近年は心身の障害・不安、社会的排除やまさつ、孤立や孤独という要因が重複、複合していると指摘した。

 そして、従来は家族や地域の自助・共助で個別問題を解決してきたが、今は個人が近隣や地域との接触・交流がなくとも生きていけるため、問題解決が困難になっていると説明。また行政側には福祉業務の専門化が進み、すき間の問題が見えにくくなっており、サービス提供側も委託業務に終始しがちで、困窮した人たちのニーズがとらえられないと述べた。

 その上で、これからの地域福祉のあり方として、全国各地の中学校区域に着目。平均的区域の人口約1万1600人に、年間で介護保険6億円、医療費30億円、生活保護費2億円と、豊富な金額が投じられている計算になり、ここを基盤に地域福祉を作り直すよう考えてみたらどうか、と現実的に提案した。

 続く討論では、大津市社会福祉協議会の山口浩次さんが大津市は7ブロックでの地域福祉懇談会で、さまざまな課題や改善点など出し合い、多くの市民が継続的に取り組んでいると報告。同時に隔月でカウンセラーや相談員など援助職のミーティングを15年開催しているが、孤立した援助職が疲れがちで、相互のつながりが大事だと発言した。また寝屋川市民たすけあいの会の冨田昌吾さんは、どんな相談、困りごとでも大切に聞き、活動につなげることを原点にしている、と30年の経過を紹介。7年前に設立のNPO(民間非営利団体)が法制度に乗った事業を受け持ち、元の会はそのままで制度外の問題に力を注いでいると伝えた。

 分科会では精神障害者の退院促進問題について湖南病院の森このみさんが、退院して援護寮、グループホームや自宅へ移行した人がこれまで計16人に達した、と先進的な取り組みを発表。県立むれやま荘の川崎久美子さんは、中途身体障害者の社会復帰に日舞や絵手紙などボランティア活動が機能復帰訓練に効果を発揮していると伝えた。このほか高齢者、児童、福祉教育の分野で実践報告があった。


<メモ>滋賀県社会福祉学会
草津市笠山7ノ8ノ138 滋賀県社会福祉協議会 TEL077(567)3920