ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


宅老所 心


 草津市で唯一のかやぶき屋根の民家を、特定非営利活動法人(NPO法人)「心」が宅老所として営んでいる。救護施設で働いた経験を、生まれ育った地域に生かそうと介護福祉士の理事長村田美穂子さんが中心になって、周辺に働きかけて組織を5年前に立ち上げた。古く懐かしい家を、だれにでも親しまれる高齢者介護の拠点へ改修。小さい規模ながら、身近な相談やデイサービスからナイトケアまで、住民に頼りにされる施設に育っている。

写真
かやぶき民間の広間で大家族のように集まって
ゲームを楽しむ利用者たち(草津市、宅老所 心)
かやぶき民家を拠点に 和める「自分の居間」
 6年前、村田さんは母親ら近所のお年寄りグループが集まるサロンを草津市内の自宅で始めたのが、地域福祉へのきっかけとなった。翌年、父親が住んでいた離れを改修するとともに、地元の知人、民生委員、自治会役員や婦人会役員、行政書士などに働きかけてNPOを設立し、2004年に宅老所をオープンさせた。

 拠点のかやぶき民家は、築100年。天井のすす竹が濃い茶色に染まり、お年寄りにとっては「自分の居間」と受け取られている。かやぶきなので夏は涼しく冷房はあまり必要がなく、一方、冬は暖かい。広間(26平方b)を中心にして、ベッド2台を置いた休養室、談話室、事務所兼相談室のほか浴室、調理室などを備えている。

 ベッドで休む人の傍ら、スタッフが連れてきた幼児が遊んでいる。またゲームを楽しんだり、近接の空き地で草をむしったり、決まりきったスケジュールよりも、利用者1人1人、自由に好きなことをしている。まるで一昔前の大家族のような、和んだ光景である。

 通所デイサービスの定員が8人。それにナイトケアの定員が2人。当初は、利用者が少なめだったが、2年目からは軌道に乗り、最近は定員一杯に近い盛況ぶり。通常のデイサービスは午前10時から午後4時だが、家族の仕事の勤務時間などに添って午後8時半までの延長を引き受けている。また泊まりも草津市ナイト事業を含めて、週末を除いて連日というほどニーズが続いている。

 相談は年間約50件にのぼる。近隣在住の人が多く、介護保険の申請や問い合わせという初歩的な手続きから、認知症に対応する施設の照会、あるいは家族の悩みやストレス解消策まで多岐に及び、地域の手軽な相談窓口として親しまれている。また、近くの高校、中学校計4校の総合学習として定期的に生徒たちを受け入れ、福祉の教育に協力。さらに月1回は公民館などでのレクリエーションや介護セミナーの開催など、啓発活動に努めてもいる。スタッフは常勤・非常勤で計15人。村田さんの元同僚など経験豊富な人が多く、常勤7人の中に介護福祉士、介護ヘルパー2級の有資格者も4人いる。地域密着のNPOだけに、隣接の駐車場や空き地などの無料賃貸の申し出があるなど地元の協力を取り付けている。

 「最近はここがあるので、安心して年がとれる、と地域の人に言ってもらえるようになりました。宅老所を開設してよかったなあ、と思っているんです」と村田さんは、手応えを感じている。


<メモ>宅老所 心
草津市駒井沢町343 TEL.077(568)3175