ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


長等ほたるの家


 町家をそっくり再生させた、デイサービスの「長等ほたるの家」は大津市内の目抜き、ナカマチ商店街の一角を占めている。空き店舗を利用する都心活性化の一助とともに高齢化した地域に見合った福祉資源として再活用されている。企業の福祉活動から始まった特定非営利活動法人(NPO法人)ハート・イン・ハンドチャリティーが、4年前に同家を開設したのに次いで、同商店街には現在、福祉施設が4カ所に増えている。

写真
介護スタッフとともに和やかに昼食を楽しむ利用者たち
(大津市長等2丁目)
空店舗でデイサービス リハビリに買い物人気
 同NPO法人は、化粧品・医薬品販売などの日本セーフティーウォーター(現、彩生舎=大津市)に1999年、福祉部が設けられ、企業サイドからの福祉活動を始めたのが発祥。県内の作業所へ印刷機を寄贈するなど活動した後、2001年に独立し、NPO法人の認証を受けている。その名称は支援する側、される側という従来の関係から「ともに支え合い感謝し合える関係へ」との意味という。当初は、名刺印刷などによる障害者福祉を手がけたが、物部夫美子理事長ら理事会が、社会貢献と共生型社会に向けた新たな活動としてデイサービス事業への進出を決め、大津市の助言も得て同商店街の空き店舗を借り、04年秋、開設へこぎつけた。

 県内随一の商店街には長い間、空き店舗があった。その町家の外観を残して商店街になじむように、しっくい壁に木の引き戸、木製家具、のれんなどあつらえて改修。30平方メートルの和風の広間を中心に休養室、風呂、トイレ2カ所を設けている。

 定員は10人。営業は月―土、午前9時半から午後4時。開設当初は利用者が少なかったが、しだいに軌道に乗り、最近は定員一杯に近い利用率になっている。

 小規模デイサービスの特徴を生かして、商店街での買い物や炊事、洗濯、趣味など、利用者に身近な生活スタイルをリハビリに役立てている。その中で、人気の高いのが目の前の商店街への買い物。利用者の多くは、古くから通ったことがある商店街だけに、商店主など顔見知りも混じり、あいさつを交わすなど自然なコミュニケーションができる。その上、商店街のアーケードは、晴雨を問わずに1年中散歩ができるのも強みだという。

 ほたるの家は、地元の町内会に加わっているほか長等商店街振興組合にも加盟するなど地域との提携を図っている。一方、地元から商店主らが三味線持参による民謡教室やハーモニカ演奏などで同家を慰問するなど交流が始まっている。「設立から3年余り過ぎて、やっと市民権を得られた感じですね。ほたるの家はスタッフだけではなく、商店街や地域の方々から支えて頂き、私の理想とする形になってきました」と所長の立入道夫さんは、手応えを感じている。

 この家の進出をきっかけにして、ナカマチ商店街には、この3年間でグループホームや小規模多機能介護施設など3カ所が相次いで開設されている。地域や商店街に福祉施設がとけ込みながら、共生する。新しい市街構成の光景が現れている。


<メモ>長等ほたるの家
大津市長等2丁目3―27 TEL.077(527)0485