ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


淡海音楽療法ボランティア会


 高齢者介護施設の大広間に響き渡る豊かな歌声と伴奏。古い唱歌、流行歌や、体をほぐす健康歌謡まで、淡海(おうみ)音楽療法ボランティア会のステージは、音楽が生き生きと躍動する。車いすの人を含めてお年寄りたちは、しだいに歌声を高め、手元の楽器で合奏に加わっていく。「にぎやかで、身も心も弾んできます」と喜びの声。同会のメンバーは滋賀県内はじめ関西各地で音楽療法を13年間実践している。

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伴奏とともに懐かしい情景を思い浮かべて歌うお年寄りたち(大津市・コンソルテ瀬田で)
音楽で心身障害を回復 心弾ませる豊かな歌声

 音楽療法は、音楽のさまざまな働きにより、心身の障害を回復し、その機能の維持改善、生活の質の向上などをめざす手法。日本音楽療法学会(日野原重明会長、本部・東京)が2001年から音楽療法士の資格を認定、福祉現場で活用されている。

 この学会組織が生まれる前から、同ボランティア会代表呉竹英一さん(67)は、大津市内の中学校や岐阜、滋賀両県の大学で音楽療法を研究し教えてきた。そのなかで1995年、滋賀県安土町の依頼により、音楽療法コンサートを同町の文芸セミナリヨで開始。そのおりスタッフを募ったのがボランティア活動への第一歩。その後、活動範囲を広げ、現在の会員は全国に及び約150人にふくらんでいる。

 主に活動する滋賀県内では5、6人のグループで、高齢者の福祉施設はじめ病院、養護学校など約30カ所を定期的に訪問している。要望により静かな音楽鑑賞や、共に歌い合奏する参加型まで工夫している。簡単な解説やトークを交えて10曲前後、1時間ほどが普通のステージという。

 コンサートのほか同会は音楽療法士の育成研修会を随時、開催。また会員たちの実践経験に基づいた楽曲集の編集、さらには体の機能の訓練に役立てる健康歌謡を作詞・作曲し、これまで計50曲を発表している。

 呉竹さんは「あちこちで音楽会を楽しみに待ってもらっています。みなさんは終わった後、歌を歌ったり、身体がよく動いたり、元気になられます。薬と違って副作用もありませんし、脳波、ホルモン分泌など生理データからも音楽療法の有効性が明らかになっています」と説明する。

 インストラクターの高田光代さんは、5年前に幼稚園勤務を退職した後、この会に加わったが「音楽ボランティアはとても楽しいですよ。行った先々で、音楽を通じてみなさんが元気になり、また、こちらも元気をもらい、一挙両得です」と話す。伴奏者の今江充子さんは「毎回、毎回、笑顔で帰って行かれるのを見るのが、うれしいです。音楽は上手下手ではなく、心に届き、響くものと感じさせられます」と言う。一方、初参加の看護師の谷律子さんは「音楽療法は一緒に歌い合奏しながら、心身をほぐしていきます。看護の仕事のほかに自分の音楽の技術を生かせるような気がしてきます」と手応えを語っている。


<メモ>淡海音楽療法ボランティア会
大津市国分2ノ22ノ6、呉竹方 TEL.077(534)0451