京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●UP 地域の力
京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や ゆーら企画
里山に囲まれた綾部市山あいの集落はふるさとのにおいがする。その一角、落ち着いた土壁の民家でにぎやかにコンサートが開かれていた。民家に住んでいる画家、関輝夫さん・範子さん夫妻が主催する定例行事だ。
やってきた客は庭先でなにやら入場券らしきものを求めている。よく見ると「1ゆーら」と印刷された地域通貨だった。「若い人が頑張ってくれているからね。少しでも地域通貨を知ってほしいとコンサートで利用させてもらっている」と関夫妻は笑顔で話す。手元に集まった「ゆーら」はパソコンの修理依頼などに使うという。
「ゆーら」の発行が始まってすでに6年余りがたつ。発行のきっかけとなったのは、東京からのUターン者や主婦、若者らが、それぞれが持つ夢を実現するために集まったことだった。 交流を深めるだけではなく、もがきながらでも行動することで発する「摩擦熱」で地域を温めようというのがグループの狙い。参加者の1人だった京都府職員の村上章さん(41)は、以前から興味を持っていた地域通貨の発行を提案する。 これに賛同したメンバーたちは、地域通貨研究会をつくり、月1回のペースで先進地の視察やシンポジウムを開いた。発行母体となる「ゆーら企画」も誕生して2002年1月に「ゆーら」はスタートした。 現在はコンサートの入場料だけでなく、NPO法人(特定非営利活動法人)あやべ福祉フロンティアが行っている移送サービスの利用や綾部市老人福祉センター「清山荘」が行うグラウンドゴルフ大会の参加賞などにも使われる。 参加賞の「ゆーら」は清山荘の入館や入浴料、喫茶店や特産品などの売り場で利用できる。このほか京都府立中丹文化会館で上映される映画チケットの購入や、個人同士や団体がちょっとしたお礼として使ったりもするのだという。 だがこの6年で課題も見えてきた。ゆーら企画の会社員四方源太郎さん(34)は「もらった地域通貨はパソコン修理や送迎など他のサービスで使うのが原則だが、幅広く流通させるまでにはいたっていない」という。 ただ流通させることだけにこだわっていない。地域通貨は目的ではなくあくまでまちづくりの手段だと考えているからだ。「ゆーら」を媒介にした地域の人々の交流の輪はゆっくりとではあるが拡大している。 ゆーら企画に加わっている会社員大槻悟さん(41)、村上さんらは、「受けられるサービスに関心は高いが、自分たちは何ができるかへの関心がいまひとつ」と現状を厳しく認識しながらも、「人助けを広げるきっかけになればいい。」とこれからに夢を託す。 「ゆーら」の名はゆったりと流れるふるさとの大河、由良川にちなんでいる。焦らずに、しかし止まらずに、これからも息の長い活動を目指している。 <メモ>ゆーら企画 綾部市並松町上溝口20ノ3 両丹企画内 TEL.0773(43)0453=四方さん
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