ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


NPO法人 歩歩


 大津市の特定非営利活動法人(NPO法人)歩歩(ほほ)は、介護保険施行をきっかけに7年前、設立された。同市内で開かれたグループホーム・宅老所開設講座の受講者数人が、自分たちで何ができるか、話し合いを続け、ついにはNPO設立からデイサービスの介護施設の開設、日々の運営へ、と歩んできている。一歩一歩進む。NPOの名称が由緒を物語っている。

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昼のお茶の時間を楽しむ利用者とスタッフ
居心地の良さを追求「在宅介護の一助に」

 最初のメンバーは5人。看護師、事務職、栄養士などさまざまだが、資産ゼロからの出発だった。それぞれができる範囲で、労力、知恵、お金など出し合って、協力した。メンバーの1人、冨永和子さん(69)=同NPO現理事長=は40年間勤めた総合病院の退職金の半額を出資、改修や運営費など立ち上げに尽力した。冨永さんは在職中に訪問看護ステーションで働いた経験があり、「病院に入ったとたんに落ち着かなくなるお年寄りが多くみられ、住み慣れた家こそ、最も暮らしやすい場なのでは」との思いが強かった。

 こうして、市北部で民家利用のデイサービス施設を目標とした。あちこち十数件の民家を物色した末、ある共同作業所の移転に伴って空いた家を探し当て、借り受けた。デイサービス施設は、1階を改修して畳の間の多目的室、機能訓練室、静養室、相談室のほか浴室、トイレなどを完備。また330平方余の敷地には駐車場のほか、ゲートボールを楽しめる空間まである。

 営業は月〜金曜(年末と祝日を除く)、午前9時から午後4時。定員は10人で、昨年の年間利用者は延べ2千人と高い人気を集めている。スタッフはパートを含めて8人。地域のボランティア7人が曜日ごとに分担、協力している。

 このほか介護についての相談、あるいは出前講座などを行い、さらには中学生のボランティア実習を年間通じて受け入れている。

 同サービスの自慢の一つは看護師、介護ヘルパー、栄養士など豊かな技能を持つスタッフ陣。その中で栄養士の腕を生かした手製の昼食は評判が高く、時には裏の畑で栽培した新鮮野菜が供される。また田園ののどかな立地を生かして近所の散歩、花見や紅葉見物、雪見など季節にあった楽しみ方を採用してもいる。

 今のところ、同NPOの活動は、歩歩の運営に集中しており、会員は16人に留まっている。

 冨永さんは「家から家への感じで利用者さんに違和感がなく、歓迎されています。病院とは違った役割をもちながら、在宅介護の一助になればと、質のいいサービスを心がけています」と7年間の手応えを語る。

 理事で経理担当の中井豊子さん(57)は「NPOとしては、今は、ここを運営するので手いっぱいで、今後、活動の幅を広げていくのが課題ですね。安い給料なのですが、利用者さんとスタッフみんなの笑顔を見ると、居心地の良い場所だと感じます」と話している。


<メモ>特定非営利活動法人 歩歩
大津市真野4ノ17ノ26 TEL.077(573)8203