ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


N特定非営利活動法人 喜房会


 彦根市を本拠にする特定非営利活動法人(NPO法人)喜房会(五味由紀子理事長)は、2007年9月に認証されたばかりの新団体である。さまざまな市民が地域福祉に取り組もうと集まって、4月から認知症対応のデイホーム「ぶどう」を同市内に立ち上げた。住宅街のなかの民家を改修したなじみやすい構え。まだまだ利用者は少ないけれど、会員や知り合いの人たちなど三々五々訪れて、利用者ともども毎日、なごやか、にぎやかだ。

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新設の介護施設でゲームを楽しむ利用者、スタッフ、ボランティアたち
地縁生かした「大家族」利用者と会員一体に

 NPOの名称は「ぶどうの房のように寄り集まり、一人一人の喜びになるように」との願いを託している。その最初の拠点デイホーム「ぶどう」は五味さん(69)の自宅を利用している。芹川に近い住宅街の一角、敷地330平方メートルとゆったりした広さ。広間を中心に和室、調理場、浴室、トイレなどを完備。通所介護の定員は12人。営業は月〜土曜日、午前9時半から午後4時まで。日曜と年末年始の4日間が休み。早朝や延長や泊まりなどは介護保険外として相談に応じることにしている。

 開設から間もないので利用者は、今のところ数人にすぎないが、中に入ると多くの人たちで込んでいる。連日、NPO会員や知り合いや友人などが集まっていて、実際には、どの人が利用者かボランティアか、判別できにくい。なかには午後のひとときを音楽の演奏や合唱で過ごすため電子楽器持参で来訪する熟年女性があり、パソコン技術のある理事は事務処理に励み、ヘルパー資格のある会員が、再三、手助けに訪れるなど、ごく自然なボランティアぶり。

 NPOの会員は現在、131人。新規の会としてはなかなか多人数だが、地元町内の住民はじめ看護師、元会社役員、合唱団のリーダーなど多彩な理事たちが、それぞれ知人、友人を誘ったためで、古い城下町の地縁を生かしている。

 理事の1人、矢田豪さん(68)は、元会社員で、定年退職後の生きがいになるボランティア活動として、NPOに参加した。「みんなと一緒に力を出し合って、少しでも役に立てばと思っています。デイサービスの次の事業として福祉有償運送サービスを立ち上げたいと、現在、努力しているところです」と話す。

 ボランティアの1人は「ここに来るとお付き合いの輪が広がり、大きな家族のような雰囲気が好もしい。自分の元気のもとになります」と語る。

 五味さんは現役の小中学校の校長時代に祖母の介護支援を受けた経験があり、退職後は、社会に恩返しをと6年間、彦根市助成の高齢者サロンの運営に尽力。そこが今春、借家の都合により閉鎖され、念願の介護事業へ転じた。「来てくださる方々が自分の家で普通に暮らされるように、心安らかに過ごしていただき、家族の方のご苦労を少しでも手助けできればと願っています」と笑顔が穏やかだ。


<メモ>特定非営利活動法人喜房会、デイホームぶどう
彦根市後三条町468 TEL.0749(26)3135