ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


特定非営利活動法人わくわくゆうネット志賀


 地域の住民がお互いに助け合えるネットワークを築いて住民参加型の地域社会へ―。特定非営利活動法人(NPO法人)わくわくゆうネット志賀は、大津市北部、旧志賀町を本拠にして、8年前に設立されている。当時、施行された介護保険では、高齢者の日常の生活をすべて網羅できるわけではなく、ボーダーラインの人たちなどの日常生活へさまざまな支援が欠かせない。そこを身近な住民同士で助け合い補う、地域に根ざしたボランティアである。息の長い組織へ、と地道な活動を続けている。

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NPOの日常運営について話し合う会員たち
住民同士で助け合い 高齢者の暮らしを支援

 「たとえば、近所で蛍光灯を取り換えてほしい、という簡単な用事を手伝ってあげる。そんな身近なところから始めて、草引きや植木の手入れなど、だんだん広がったんです」と沢村魏(たかし)理事長(69)は、発足当初を振り返る。

 介護保険の施行に先立つ1年前からNPO設立の準備を始めた。町内や地区などで住民同士が助け合う団体などに働き掛けて、会員を確保した。当初、会員は約30人だったが、身近な活動につれて、口コミで加入者が年々増え、今では130人に達している。

 利用方法は、手助けを求めるお年寄りたちが、同NPO事務局へ連絡すると、そのサービスに対応できる会員が派遣される。受益者が費用を支払う有償制が原則。その料金の一部を会員が寄付することにより、会の運営・維持費がまかなわれている。

 昨年度の年間サービス件数は958件。例年、年間1千件前後で推移している。その内容は、病院などへの車による送迎が最も多く502件、ついで洗濯222件、食事の準備などの家事120件と続く。このほか消毒、庭掃除、代筆、水やり、買いもの、観光など多岐に及んでいる。

 ここ数年、代筆ボランティアを手がけた藤野早苗さん(63)は「俳句や短歌を趣味にしていたおじいさんが病気のために文字が書けなくなられ、週2回、自宅で口述筆記をしました。応募作品が入賞すると、とても喜ばれました。亡くなられた後の同窓会にまで私を呼んでもらうほど親密にしてもらいました」と体験を語る。

 5年前、退職後に参加した小林武男さん(69)は「月平均で5、6回の送迎を手伝っていますが、一番の収穫はたくさんの人に出会えたこと。健康でいるのはありがたいことと思えてきます」と地域に生きる喜びを伝える。

 また30分以上の作業を条件にして年間のボランティアが200日という石津国一さん(74)は「地元町内のサロンの世話や街路の草引き、介護施設での喫茶サービスなど、あれこれ手がけてます。寒暑を避けながら、ぼちぼちやってます」とマイペースを保つ。

 「今後、高齢化が進み、需要が増えるのは必至ですから、それに対応できるよう努力していきたい。なんとか少しの時間でも若い人たちの参加、協力ができるようになれば」と沢村さんは今後の課題をとらえている。


<メモ>特定非営利活動法人わくわくゆうネット志賀
大津市南小松888 南小松公民館内 TEL.077(596)0781