ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


ボランティアグループ「FV」


 京都市中京区のボウリング場で車いすの人も加わったグループがゲームを楽しんでいた。傾斜のついた溝を転がして重いボールをレーンに導く木製の台が用意されている。これを使えば体の自由があまり利かなくても投げられる。レーンの両脇には小さな遮へい板がせり上がり、ボールが落ちないように工夫されていた。

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車いすの人とボウリングを楽しむFVの若者たち
遊びながら笑顔で交流 学生中心「家族的」に

 車いすの人に付き添って手助けをしているのは若者たちだ。お互いに親しげで笑顔が絶えない。この若者たちは、ボランティアグループ「FV(フレンドリービジター)のメンバーで、この日は月に1度の「みんなの会」が開かれていた。会では障害者とゲームや花見、バーベキュー、運動会、もちつきなど季節に合わせた行事を行っている。

 FVの歴史は古い。もとをたどれば1955年に京都YMCAが滋賀県で開いた体の不自由な子どもたちの療育キャンプで、支援してくれるボランティアの学生を募ったのが始まりという。参加した学生たちがつくったリーダー会がその後、グループ「G・S」になる。

 G・Sという名前の由来が面白い。行政がやらないなら自分たちの力で、おせっかいでもいいから充実した偉大なものをと、グレート・オセッカイ、グレート・サービスの略なのだそうだ。ボランティアがまだまだ市民権を得ていなかった当時、新しいことに挑戦しようとする学生たちの意気込みが感じられる。このG・Sから1966年にFVが生まれた。

 中心となるのは学生で、卒業などでメンバーの入れ替わりが多く、停滞期もあった。しかし卒業後もボランティア活動にかかわっているOBも多い。現在は、同志社大京都女子大などの学生たちと社会人で伝統を守っている。

 活動は「みんなの会」と障害者のいる家庭や施設を数人で訪れて遊びながら交流する家庭訪問が中心だ。京都大大学院の鵜飼信さん(25)は、「基本的に参加したいときに参加する。強制はしない『ゆるい』感覚の運営をしている」という。

 京都ノートルダム女子大の岡部明日香さん(21)は「ここで障害者と初めて触れ合った。戸惑いもあったけど、今は友人のような関係です」と話す。「活動を通して小さな段差でも行動の大きな妨げになることを知った。そんな現実を改善してほしい」というのは同じ大学の武田亜由子さん(20)、OBになっても活動するつもりだ。

 代表を務める京都工芸繊維大の矢田部孝章さん(20)や佛教大の倉橋佳子さん(21)も「家庭訪問をすると食事を用意してもらったりして、家族の一員のような付き合いです」と活動を楽しんでいる。卒業後も訪問していた家族と付き合いが続くケースも多いという。ボランティアをしている、されているという意識を超えた家族的な関係がグループの大きな特徴となっている。

<メモ>FV(フレンドリービジター) 毎週ミーティングを行っているが、固定した事務局は無い。 連絡は、http://sak2-1.tok2.com/home/fvs/index.htmlからメールで。