ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


特定非営利活動法人 古屋改修ネットワーク


 瓦屋さん、水道屋さん、左官屋さん、工務店の社長さんに電器屋さん、ハウスクリーニングなど、京都市中京区の京町家で開かれた7月定例会には、家に関するプロが顔をそろえた。話し合いの内容は、10月18日に開く次回の講習会について。講習会は午後6時から下京区の四条京町家(京都伝統産業振興館)で、「左官とハウスクリーニング」をテーマに開くことになった。

写真
町家に集まり、今後の活動を話し合うメンバーたち
「家のプロ」改修知識指南 リフォーム詐欺防止へ結束

 2006年11月にNPOが発足してから、講習会は5回開いている。「瓦、屋根」に始まり「鈑金、内装」まで、専門職のメンバーが講師になり、長年経験を積んだ職人の目線で古い町家の傷みの見分け方、安く修理するにはどうするかなど手入れの方法を伝授してきた。

 講習会の開催は、京都市内に数多く残る木造家屋についての正しい知識を、住んでいる人や市民に持ってほしいと願ってのことだ。「知識不足に付け込んだリフォーム詐欺は瓦や屋根に関するケースが多い。前もって瓦や屋根について広く知ってもらうことが重要です。それが被害防止につながる」と、メンバーで瓦店を経営する光本大助さん(50)はいう。

 「近くで工事をしている業者ですが、近所なので無料で点検しましょう」「耐震調査のために巡回しています。屋根裏の診断をさせて」などなど、リフォーム詐欺はまだ後を絶たない。「このままでは地道に信用を大切にしながらやっている多くの業者に不信感が向きかねない」という危機感から、理事長で工務店社長の荒木勇さん(46)が、誰でも相談できる窓口を作ろうとNPO結成を仲間に呼びかけた。

 水道の仕事をしている神田拓哉さん(37)は「だまされても気付いていない人も結構いるんです」と、知らないことの怖さを指摘する。左官業の油弘二さん(71)は「第三者的に相談に応ずる窓口が大切です」と話す。発足とともに開設した「リフォームトラブル110番」には1年間で約60件の電話相談があった。ほぼ半数は瓦や屋根について、耐震補強などの相談も多かった。メンバーが現地で工事の内容を確認することもあるが、必要のない工事を行っているケースが目立つという。

 なんとか詐欺的な工事が防げないかと、昨年末には「町子ちゃんの悪徳リフォーム撃退物語」と題した冊子も発刊した。A5判、1部100円で、「瓦職人は戸別訪問で仕事をとるようなことはまずない」「水道局が無料で家の中の配管を点検することはない」などのメッセージをマンガで分かりやすく説明している。

 荒木さんらは、木造の家は正しく手入れすれば孫の代まで使えることを知ってほしい、寒くて暗いなどの不満も工夫をすれば解決すると強調する。明治、大正、昭和と波乱の時代を耐えてきた古家を安易に取り壊さず、ちゃんとした手入れを続けて存続させ、町並みを守っていければ、というのがメンバーの共通の願いだ。

<メモ>特定非営利活動法人古家改修ネットワーク
京都市右京区梅津高畝町52ノ2 相談はTEL.075(882)8721へ。