ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


京とおうみ自然文化クラブ


 定年退職は大きな人生の節目だ。退職後何をするか。現在副会長を務める谷口節さん(72)は、再就職はせず、何か別のことをやりたいと考えた。だが、明確なものがあったわけではない。まずは、若いころに親しんだ山歩きをもう一度と、再び山に入った谷口さんだが、昔とは気持ちがずいぶんと違うことに気が付いた。

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会員から説明を受ける小学生たち(京都御苑で)
自然を伝え、社会に貢献 自らも欠かさず勉強

 上ばかりを見てひたすら高みを目指した若いころは目に入らなかった足元に広がる自然が気になる。そこここにあるさまざまな植物について、もっと知識があればどれほど楽しいだろう。

 そこで自然観察の通信講座や自然観察指導員の講座を受ける。だが凝り性でもっと勉強したいという思いが募った。そんな谷口さんが出会ったのが、大阪市にある特定非営利活動法人「シニア自然大学」だった。ここでは専門知識とともに自分の思いや知識をどのように伝えるかまで学ぶ。

 「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」は、谷口さんや会長を務める小田切晴男さん(81)らが、学んだことを生かして自分たちの住むところで活動をしたいと、シニア自然大学の地域組織として2004年に結成した。

 谷口さん同じように定年退職後にシニア自然大学で学んだ男性や子育てを終えた女性らが次々と参加、メンバーは今年に入って100人を超えるまでになっている。

 「仲間が集まった方がいろんな情報が得られやすくなりますし、1人では行けない場所にも一緒に観察に出かけることができます。それに自然大好き人間が増えていけば、自然保護の促進に大きくつながっていくと思います」と、小田切さんの口調は若々しい。

 クラブの活動の柱は2つある。1つはメンバーのレベルアップを目指す研修だ。月1回の例会などで勉強は欠かさない。伊吹山などへ出かけることもある。テーマは植物や昆虫、野鳥などで、会員たちにはそれぞれ得意分野を持っている。

 もう1つは、学んだことを社会的な活動を通して広く伝えることだ。「子どもたちに勉強してきた自然の豊かさや奥深さ、自分たちが自然観察から得た感動を伝えるのが一番の楽しみです」と谷口さんはいう。

 今年は京都市内の小学校と連携、総合学習の一環として京都御苑の自然に触れる催しを行い、会からは20人が参加した。御苑内の「母と子の森」に6カ所のポイントを設け、グループに分かれた子どもたちがポイントを巡りながら、会員から話を聞いたり質問をする。身近な場所の素晴らしさに気付いてもらうのが目的だ。

 京都市伏見区の観月橋近くの宇治川河川敷は、「ツバメのねぐら」として有名だが、会員はここで開かれる観察会の講師もする。そのほか冬鳥の観察会、水生動物の調査、自治会の依頼を受けて樹木の名前を調べて名札をかけるなど、活動の幅は広い。

 「依頼があればどこへでもという気持ちです。学ぶ充実感、仲間といるときの存在感、社会的な活動をする使命感などが、かけがえのない生きがいにつながっていると感じています」と、谷口さんの表情は明るい。

<メモ>京とおうみ自然文化クラブ
京都市左京区高野泉町40、谷口さん方 TEL.075(701)0843