ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


ちんどん屋「こうあん一座」


 町で見かけるのがまれになったちんどん屋さんだが、滋賀では、最近、ゆかいなちんどん屋「こうあん一座」が結成され、県内各地で新たに活躍し始めている。かねや太鼓に拍子木などにぎやかな囃子(はやし)に乗って、きばつな白塗りの化粧に奇妙な衣装の一座が練り歩き、踊り出す。とたんに陽気で活気に満ちた場面が出現し、周りの人たちの耳目を引きよせ、心を弾ませる。そのユニークな発想と仕立てが、地域福祉へ活気をもたらしている。

写真
にぎやかなはやしとともに色とりどりの
衣装で練り歩くちんどん屋こうあん一座
にぎやかに笑顔届ける 衣装も踊りもオリジナル

 一座の母体となるのは、6年前に守山市で設立された福祉団体「こうあん」。障害者の自立を支援するグループで、食事会、料理実習や、合宿などによる生活支援など催している。その仲間の1人が病気になり落ち込んでいるので慰めようと、会員たちが思い立って、ちんどん屋を急きょ結成。これをきっかけとして、3年前から一座の活動を次第に本格化させている。

 当初、どうしたら、ちんどん屋になれるのか、すぐさま習えるあてもなく、それぞれに抱くイメージを頼りに、囃子から踊りや練り歩きなど手探りで模索。衣装も思い思いに手作りし、20人分を調えた。

 会員の福祉レクリエーション・インストラクターの黒田玲子さんは「振り付けを一応、作ったんですが、だれも一向に覚えてくれません。それぞれできる範囲で、それらしく身体を動かしてくれたら」と見守っている。

 今では、座員はさまざまな障害がある人たちを含めて約50人という大所帯。福祉関連のイベントや催しに出演するほか高齢者福祉施設、障害児の体験講座などへ、年間で約60回ほど出動している。催しの大小に添って、それぞれ出演者は数人から20人ほどまで規模を調整している。

 草津市立障害者福祉センターの教養文化講座には、松井喜美子・代表ら一座7人で出講。1時間がかりで顔を白塗りしたあと、くまどりなど施し、その上、色とりどりにピエロや河童(かっぱ)などに衣装合わせする。その後、太鼓やかねなど鳴り物を手に、いざ、出演。デイサービスや学童保育に通う障害児らを前に音楽とともに晴れやかに練り歩き、まずはサンバのリズムで踊りだす。陽気で弾むような音楽に誘われて、子どもたちは、次第に身体を動かし、歌を歌い、踊りの輪に加わっていく。座員と子どもが一体になった、活気と笑いに満ちた情景が出現する。

 ここでの月1回の講座を子どもたちは心待ちにしているといい、職員スタッフも「日常とは違って、にぎやかで活気があって、楽しい」と歓迎している。

 松井さんは「多くの障害者に出会え、一生懸命に生きてられる姿にふれあいます。ちんどん屋のなりふりに恥ずかしがってる間もありません。ちんどん屋の笑顔を送ると、笑顔をもらえます。みんなで笑って、楽しむだけなんです」と、そのユニークな内情を話している。

<メモ>ちんどん屋「こうあん一座」
守山市今浜町2224ノ1 TEL.077(584)2305