ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


お山のれすとらん パズル


 京都市北区の原谷にある介護老人保健施設の一角に「お山のれすとらん パズル」はある。営業時間は午前11時から午後4時まで(日曜休み)で、共同作業所「立翔館」の知的な障害がある8人が交代で働いている。このレストランの開業を提案したのは同じ北区で「レストラン思風都」を経営する土井善子さん(60)だ。

写真
「パズル」を支える土井さん(左端)と
スタッフたち
知的障害者が力を発揮 働きやすい環境模索

 京都中小企業家同友会の障害者問題委員会の委員長でもある土井さんは、同友会の理念に基づいて、地域の福祉施設との連携を経営方針に掲げてきた。土井さんの提案に保健施設を運営する社会福祉法人「七野会」が賛同、「立翔館」との連携も実現して2004年にオープンした。

 「共同作業所ではレストランの仕事はまったくの未経験ですから、来てくれる人たちに何ができるのかを考えながら」(土井さん)のスタートだった。まずメニューを簡略化して、なるべくお客さんに動いてもらう3種類のバイキング方式のランチで始まったが、慣れるに従ってメニューを複雑にしてきた。

 4年あまりを経た今では、最も人気がある500円ランチが7種類なのをはじめ、全部で11種類のメニューがそろう。テーブルごとに色分けした注文カードを作り、伝票ににも書き込みやすくするなどみんなで知恵を出し合って、だれがやっても分かりやすい方法を編み出してきた結果だ。

 「思風都」から派遣されている店長の岡本恵さん(34)は「最初のころは仕込みなどもすべて私がやっていました。みんなからこわい、と思われているかもしれないんですが、やってもらわないと困るという気持ちで、時には厳しく一緒にやってきました」と振り返る。そのかいあって「今はみんな十分な戦力になっています」と笑顔で話す。

 レストランの仕事は、お客さんにとってどうなのかが基本で、すべては客中心に回っていく。作業所とは環境が大きく違うため、人の応対が苦手な人は調理場で、大丈夫な人は店内で働く。人によってかかる時間は違ってはいるが、レジ係もこなせるようになった。一緒に働く立翔館の指導員吉川智子さん(31)は「ここまでしかできひんやろう、できなくて当たり前というのは、それは違うと思うようになりました」と認識を改めたという。

 近くにある「七野会」施設の職員らの利用がメーンだが、最近は地域の人が会合などに使い地元にもなじみ始めている。土井さんの夢はこのレストランを足がかりに、障害のある人が社会に出て働くことにある。そのために他の作業所などからも職業訓練に来てもらっている。

 「個人の状態を見ながら、同友会のネットワークを使って企業での職場実習にもつなげています。一人一人にはそれぞれ潜在する力があるんです」という土井さんは、その力を発揮できる環境づくりを粘り強く続けていくつもりだ。

<メモ>お山のれすとらん パズル
京都市北区大北山原谷乾町127ノ1 TEL.075(465)7087