ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


ふるさと案内・かも


 「自分たちが住んでいるところは素晴らしいところだという思いと、その素晴らしさが意外と地元の人に知られていないのではという思い、それが原点だった」と、西村正子会長(58)は振り返る。

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木津川市加茂町を訪れる人は増えている
(岡田鴨神社で)
加茂の歴史風土の魅力発信 新住民7割、特産品開拓も

 西村さんがまず始めたのは、地元である木津川市加茂町の歴史を学ぶ講座の開設だった。熱心な受講者は毎年のように講座にやってくる。知識を身につけた人も増えてきた。だがそれだけでいいのだろうかという疑問から、せっかく身につけたものを広く発信しようという「ふるさと案内人養成講座」に発展する。

 加茂町は文化財や史跡が多い。国宝の塔などで知られる浄瑠璃寺岩船寺海住山寺があり、国指定文化財34件が集中する。国史跡の恭仁宮跡当尾石仏群は有名だ。明治時代に敷かれた大仏鉄道の跡も根強い人気がある。

 それらの案内ポイントを丹念に取り上げた講座は、結局3年間にも及んだが、2002年に講座の修了者有志30人が集まって「ふるさと案内・かも」がスタートした。現在会員は50歳代から70歳代までの40人、女性のほうが多いが、新興住宅街などに移り住んだ新住民が約7割を占めるのも特徴だ。

 結成後は史跡を案内するボランティアガイドを中心に活動の幅を広げ2006年にNPO法人(特定非営利活動法人)となった。会員の知識をさらに深める専門家を招いての研修、木津川市民対象のふるさと散歩、新たなハイキングコースの開設、石仏などの散策路周辺の整備に昔話の収集、さらに山野草を使ったしおりや畑を借りての枝豆づくりなど特産品開拓、会の拠点にしている青少年センターの管理を市から委託されるなど活動は多岐にわたる。

 広報紙づくりを担当する尾崎知永子さんは、もともと体が丈夫でなかったんですが、案内でよく歩くので元気になりました。ここには20年、30年前と変わらない日本の原風景があります。ちょっと道を外れた知られざるいいところも案内したい」、定年後に何か地元にお返しがしたいと最初から参加している田中勝一さん(70)は「ハイキングや、宗教心から、宗教美術や庭園への関心から、季節ごとの花を見るなど、いろんな人が来るんです。多様な関心に応えるためもっと努力したい」と、いずれも積極的だ。

 美しい日本の歴史的風土100選古都保存財団)、美しい日本の歩きたくなるみち500選日本ウオーキング協会)にも選ばれ、熱心なボランティアガイドがいることも知られるようになって、訪れる人は増えている。昨年案内した人は2千人、今年はさらに増えそうで、会員は大忙しだ。西村会長は「他の団体との連携をもっと深めて、若い人や定年を迎える団塊世代の参加を求めながら、地域のPRにさらに大きな役割を果たしていきたい」と意欲を見せている。

<メモ>ふるさと案内・かも
木津川市加茂町里中森101、青少年センター内 TEL.0774(76)3989