ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


工房あすく


 自閉症や発達障害の人を主としてサポートする障害者支援事業所、工房あすくが、移転先の京都市伏見区で再開して半年余。以前の都心の雑居ビルから郊外の閑静な広々とした用地と独自の2階建て建物など環境を整えた。その中で生活介護と自立訓練の活動を中心としながら、生活支援グッズの開発に踏み出すなど再出発が軌道に乗ってきている。

移転して半年、活動順調 生活支援グッズも開発

写真
スタッフに見守られながら手順表を元に
1人で調理実習する利用者
 京都府自閉症協会を母体として設立された特定非営利活動法人(NPO)「生活支援センターあすく」が、下京区内に設立した小規模作業所が始まり。その後、上京区の雑居ビルに移ったが、職員の退職などの事情から2006年秋から休止していた。

 建物は民間企業の事務所を譲り受け、延べ床面積が200平方メートル超。集会室、作業室、個室など従来の間取りを有効利用している。

 現在の利用者は11人。市内や周辺地域から通所している。月〜金の週5日間、午前9時半から午後3時半まで。

 1階フロアの生活介護事業では、各人ごとに間仕切りとともに机、いす、ソファなどを配置し、落ち着ける環境を配慮。家事からさまざまな作業まで、それぞれの利用者に見合ったプログラムが組まれている。2階では自立訓練(生活訓練)事業として、軽作業、調理、パソコン事務など自立と社会参加に向け各人にそった訓練(2年間)が行われている。

 スタッフは田畑卓之所長のほか職員4人。その上に専門医師、看護師が定期的にサポートするのが強み。医師らはスタッフへの専門的な助言を行うとともに利用者、家族間での相互信頼へ尽力している。

 発達障害や自閉症の人たちの多くは、コミュニケーションがうまくいかないことがある。そこからいじめに遭ったり、引きこもりになったりしがちという。それだけに自宅から外へ出て、同施設へ通うことは社会参加の第一歩として、通所の意義がとらえられている。

 あすくのスタッフたちは、日々、利用者に向かいあい、一人一人に見合う、より適切なプログラム作成を目指している。どうしたら落ち着ける環境になるか、どんな風に情報を伝えたら納得されやすいか、行動や作業の手順をどう示すのがいいのか、など試行と工夫を続けている。

 自閉症に長く携わる田畑さんは「以前は、どう対応したらいいのか、全然分からない、こちらがパニックに陥ることが再三でした。だが、ここ10年ほどの間に合理的な考え方、手法が普及し、適切に対応できる糸口が見えるようになってきたと思います。自立のためにお互いの意思がよく通じあうコミュニケーションのツールを探し、作っていくことが、大事な仕事になっています」と話している。

 一方、同工房は、最近、「検診・検査サポートグッズセット」を試作した。市内の養護学校の養護教諭の協力を得て、視力検査、歯科治療、心電図検査などさまざま検診・検査に備えた用品一式の詰め合わせ。全国でも前例のないすぐれものなので、今後の展開を期待している。

<メモ>障害者支援事業所 工房あすく
京都市伏見区深草六反田町4ノ9 TEL.075(551)4356