ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


ころぽっくるの家


 「もう一度原点に立ち返りたかった」と、「ころぽっくるの家」を運営する亀口公一さん(58)はいう。

 京都教育大で心理学を専攻していた学生のころから、障害があったり発達につまずきや育てにくさを抱える子どもたちの療育にかかわり続け、2年前まで公立通所授産施設の施設長を務めていた。

 その間30年以上にわたって公的な支援こそが必要だとして取り組んできた。その思いに変わりはないが、地域に根ざした民間の私的な活動も欠かせない、と今は考えている。「日本の地域には、培われた人間関係によって裏付けられた相互扶助の気持ちがまだまだ残っています。そこに溶け込むかたちで療育が行えれば素晴らしい。『公』と『私』がバランスよくかみ合っている状況が子どもたちにとっては一番いい」と思うからだ。

児童デイ、末永く子見守る 家族ぐるみ、温かく

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地域に開かれた活動は
後援会の人たちと相談して決めていく
 「もう一度地域で育つ子どもたちのそばに居たい」。そんな願いが募っていたおり、施行された障害者自立支援法でNPO(特定非営利活動法人)も児童デイサービス事業所を開設できることになった。すぐに「NPO法人アジール舎」を立ち上げ、居住地である宇治市で、2008年4月に「ころぽっくるの家」を開く。定年前の早期退職に迷いはなかった。

 ころぽっくるの家には5つの活動がある。発達につまずきや問題を抱える就学前の幼児と7、8歳の小学生が親子で通いながら早期療育を受ける児童デイころぽっくる、発達相談や家族などの心理相談に応じる心理発達相談室、小学生対象に1対1で行う補習塾の親子塾、それに地域に開かれた活動として、市民講座を開き、文庫が設けられたギャラリースペースでは読書や作品展示などが行える。

 児童デイは亀口さんはじめ9人のスタッフがそろう。「遊び」を通して子どもと環境との関係をいい方向に調整していく取り組みが中心だ。相談室は日本臨床心理学会役員で日本児童青年精神医学会員でもある亀口さんが担当、親子塾は30年以上の教師経験がある妻の誠子さん(58)が担う。ギャラリースペースでの活動は、以前コミュニティーカフェを開いていた娘さんがかかわるなど、家族ぐるみの温かい雰囲気がころぽっくるの家の持ち味でもある。

 「親子塾は受け入れ可能な人数は少ないのですが、1対1で信頼関係を築き、学ぶことが楽しいと感じてもらえればうれしい」と、誠子さん。夫婦そろって子育ての相談に乗ることもある。小学生を児童デイに受け入れているのは、地域の子どもたちを末永く見守っていきたいという夫妻の願いの表れだ。将来は地域の「よきジジ、ババ」になることを目指している。

 開設時から重視する地域との関係では、昨年末に地元に後援会「らわんぶき」が発足した。会長の辻忠夫さん(70)は「後援会が中心になって定例ライブなどのイベントを開いて応援してくださる人を募っています。遊具など施設充実をサポートしていきたい」と、支援を広げる活動を強めていく考えだ。

<メモ>ころぽっくるの家
宇治市槙島町大幡26 TEL.0774(34)2382