ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


ぴいちゃんねっと


 ある日、生後間もないわが子が食物アレルギーと診断された。今まで食べていたものがほとんど食べられなくなり、食生活が一変する。外食はままならず、地域で子どものための催しがあっても、おやつや料理を出されると食べられない。「子どもに何も食べさせへんのはかわいそう」「わがままな好き嫌いや」。心ない言葉が胸に刺さる。

悩み共有、情報交換の場に 食物アレルギーに理解を

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4月のNPO法人発足をめざし会議を重ねる
メンバーたち(京都市のこどもみらい館)
 これは「アレルギーネットワーク京都ぴいちゃんねっと」代表の小谷智恵さん(42)の実体験だ。子どものために保育園や幼稚園を探し回り、ずっと以前から食物アレルギーの子を受け入れてきた保育園にようやくたどり着く。「ようがんばったねえ。これからは一緒にがんばりましょう」と言われた。やっと救いの道が見えた。

 同じ悩みを持つお母さんたちと出会い、同じ孤立感を味わい、悪戦苦闘の経験があることを知った。そんなお母さんたちに「一人じゃないよ」と手を差し伸べるため、2005年4月に立ち上げたのが、「ぴいちゃんねっと」だ。

 毎日の献立、取材して集めたアレルギー対応の店舗情報などを載せたニュースレターを月1回発行し、お母さんたちの切実な体験をもとに食物アレルギーへの理解を訴えた「あのね聞いてくれる」と題した小冊子を出した。冊子やニュースレターを通し、悩んでいるお母さんや各地域にある親の集まりとも交流が生まれた。

 「地域の集まりはお母さんや子どもの居場所だと思います。それを横にしっかりとつなぐのがぴいちゃんねっと。それぞれが抱える問題に経験者からアドバイスがもらえるなど情報交換で食物アレルギーについての知識が広まり浸透する」。小谷さんは、つながることの重要性を実感している。

 メンバーの河原畑久子さん(42)は、「生活面で次々と出てくる疑問にどうしたらいいのかと一人で悩んでいました。ここは心強いです。細かいことまで聞ける先輩と後輩の関係みたいです」と、仲間との出会いを喜んでいる。田中美保さん(36)は「これからは自分の体験を新しい人たちに生きた知識として伝えたい」と考えている。

 しかし社会の理解はやや深まったとはいえまだまだだ。「気にしすぎや」などの無理解、対応食品の購買情報など毎日の生活に欠かせないサポートや子育て中のお母さんに対する精神的支援の不足、大きな災害時に重要となるアレルギーがある被災者への配慮や対策が十分でない…など課題は尽きない。

 「原材料表示をよく吟味し、無添加や旬の食材で手作りした愛情のこもった食卓を家族で囲む。アレルギーの子を持つお母さんは、ほんまもんの味で行う子育てに自信を持っていい」と小谷さんはいう。現在特定非営利活動法人(NPO法人)化を進めており、信頼性を高めて活動の幅を広げ、課題解決に取り組む方針だ。

<メモ>アレルギーネットワーク京都ぴいちゃんねっと
京都市左京区岩倉長谷町99ノ13 小谷さん方 FAX.075(723)2350
Eメール peechannet@yahoo.co.jp