ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


なんたんアートプロジェクト


 今月13日から4日間、亀岡市の生涯学習施設「ガレリアかめおか」の広々としたロビーギャラリーに、大きな虹色のへびが出現した。高い天井から宙吊りにされたネットに、無数の布のリボンが結びつけられた現代美術作品だ。

美術でこころつなぎ合う 障害者の地域生活を推進

写真
アーティストと地域の人が一緒に取り組んだ作品づくり
 リボンはさまざまに異なる色、形、素材でできている。それが重なり合いながら全体として色彩にあふれた大きなうねりのある形を作り出して、生命の創造をつかさどる精霊だという美しいヘビのイメージを表現する。

 この作品を制作したのは「なんたんアートプロジェクト2009」に参加した多くの人々だ。南丹二市一町に住む障害のある人、その家族やボランティアはじめ、地域の人たちが自由に参加するワークショップが何回か開かれ、そこにプロのアーティスト3人が加わって一緒にリボンづくりなどをするというユニークな取り組みで作品は生まれた。

 この大きな作品には、アートを媒介に障害のある人と地域の人々が、調和しながらつながってほしいという参加者の強い思いが込められている。

 参加したアーティストの1人、宮下忠也さん(32)は「美術はコミュニケーションのためのツールです。障害のある人もない人もいろんな人が参加して感じあい伝えあって、互いのこころをつなぎあう。そんな表には出ない目に見えない部分も含めて作品なのです」とプロジェクトの意義を説明する。

 布や糸を用いた作品で国際的に活躍するアーティスト奈良平宣子さん(60)は今回のプロジェクトで主導的な役割を果たしたが、障害のある人と一緒に取り組んだことが大変に面白かったと語る。「布にさわって何かドキドキしているような感じが伝わってくるんです。私は繊維が色も素材も感触も多彩で、多くのことを表現できるのでかかわり続けてきたのですが、今回の試みで、みんなと一緒に遊ぶようにしながら作品をつくっていると、私の原点である、繊維を素直に面白がっていた自分がよみがえりました」。

 このプロジェクトの中心的な存在である社会福祉法人松花苑みずのきでは、重い知的障害のある人たちと40年以上にわたって絵画活動に取り組んできた。最初は施設での生活に変化をもたらす趣味として行われていたが、今では国内外で高い評価を受ける作品を次々に生み出すようになっている。「なんたんアートプロジェクト」の基盤には、この長い時間をかけて積み上げられた絵画活動の実績がある。

 「アートは障害のある人もない人も平等にかかわれると思うのです。施設内でやってきた活動を地域に広げていくことができれば、障害のある人が地域の一員として生活するノーマライゼーション推進に大きな力となります」。プロジェクトを企画した、みずのき施設長沼津雅子さん(58)はこう話す。時間はかかっても必ず成果は出ると信じて、来年以降もこのプロジェクトに地道に取り組んでいく決意だ。

<メモ>なんたんアートプロジェクト
亀岡市河原林町河原尻下五丹12、松花苑みずのき内 TEL.0771(23)2101