ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


森の風音


 大津市瀬田の広々とした丘陵地に滋賀県立の美術館、図書館、日本庭園などの文化施設が在来の森と共存する―県立びわこ文化公園。環境ボランティア森の風音(かざおと)は、この公園を自由に遊べる県民憩いの場へ、と整備活動を進めている。長年、放置された森の手入れから遊歩道の整備、子どもの遊び場作り、植樹や自然庭園の育成など身近な里山の再活用へ、着実な作業を重ねている。

有志で植樹や森林整備 文化公園を憩いの場に

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森の中で植樹作業をする「森の風音」会員たち
2001年、大津市内の住民など有志が、公園での植樹、森林整備など環境ボランティア活動を始めた。毎月1回、定例として、その後も継続している。07年夏、特定非営利活動法人の認証を受けるとともに会員が増え、現在、熟年層を主として約50人。

 公園は約44ヘクタールと広大な面積。もともとは雑木林の里山。それも千年以上前から利用された記録が残るほど、人里となじみ深い。一帯の西ゾーン約20ヘクタールを県側との協議の上、整備している。整備計画案では自生カエデによるモミジ山、植樹などによるヤマザクラ道、ナチュラル・ガーデン2カ所、森のようちえん、冒険遊び場、安らぎの森などに及んでいる。

 先月の例会をのぞくと、小学生から6、70歳代の熟年世代まで男女約40人が参加。山仕事に必要なノコギリや園芸バサミなどを持参し、林中に分散して作業する。1グループはスミレ、ホタルブクロ、オミナエシなど在来の日本の野草を植えこみ、ナチュラル・ガーデンを育成。また他の数人は間伐材を利用して森の中へ入る歩道を付けており、さらにはミツマタの苗木を植樹するグループもある。

 20年以上、森林部分の手入れは行き届かず、一帯は雑木やクズなどが生い茂り、林の中は薄暗く、とうてい立ち入れなかった。しかし、間伐、除草などの整備作業が進んだ区域には、光が入りツツジなど草木が花をつけだし、ヤマザクラやホオノキなどの森のシンボルとなる大木も見つかっている。同時に林中に適当なすき間ができて、だれでも容易に踏みこめるようになってきている。

 地元から参加する橋場芳春さん(70)は「定年後、散歩中に、林で作業中の人たちに出会い、手伝うようになりました。仲間とともに汗を流し、気軽に話したり、楽しいですよ」とボランティアを歓迎。また子ども連れの松田知恵子さん(38)は「昨年からこどもとともに自然に親しめるようにと参加してます。山で作業をすると、気分が晴れて、元気がもらえます」と話す。草津市から来た村林英俊さん(63)は「自分の植えたサクラが大きく育ち、花見の名所に育てば孫や子どもにまで喜ばれます」と望みを抱いている。

 瀬戸内のミカン農家に育ち、里山の作業に詳しい代表の金子龍太郎さんは、すぐそばのキャンパス、龍谷大学で臨床福祉学を教えている。「放置されて密生した森が手入れにより次第に健康になってきています。作業の成果が継続して目に見えるのが、強みです。こういった環境活動があちこちに広がり、身近な里山の再生に役立てば、と願っています」と期待している。

<メモ>特定非営利活動法人 森の風音
大津市瀬田大江町横谷1ノ5 龍谷大・金子研究室 TEL&FAX077(544)7209