ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


オルゴール・サロン・ヒロ


 オルゴールに耳を傾けたことがおありでしょうか。小さな箱から流れる調べ、澄んだ音色が、心に響いてくる―。町家が連なる京都市・西陣の一角、「オルゴール・サロン・ヒロ」は、大小さまざまなオルゴールがところ狭しと集められたユニークな名所だ。3年前から、このコレクションの一部を各地へ運んで開く「オルゴール・コンサート」が行われている。幼児からお年寄り、あるいは病床の人へ、癒やしの響きが届けられている。

癒やしの響きを届ける 子どもや病巣の人へ

写真
歌や踊りを交えながら行われるオルゴール・コンサート(京都市北区・紫野幼稚園)
 京都市内で幼稚園教諭をしていた辻井裕美さんは、4年前に退職、翌年に自宅の一部を改装、同サロンを開設した。辻井さんは、十数年前に難病のパーキンソン病を発症し、症状が進んだことから、やむなく仕事を退き、第二の人生へ。この間、難病につきまとう不安、苦しみをオルゴールの調べが、忘れさせ、癒やしてくれるのに気付き、1台1台と集めていった。

 収集品は今では100台を超えるほど。高さ240p、幅90pという世界最大級のものから手のひらに乗る小型までサイズはいろいろ。中にはシャボン玉を吹いたり、ダンスをするなどからくり人形の付いたもの、ディスクの取り換えにより数多い楽曲を奏でるタイプや、オルゴールに近縁の楽器、ストリートオルガンも含まれている。

 「自分一人で楽しむだけではなく、他の人にも開放して楽しんでもらったら」と夫の勝さんからの助言もあって、社会貢献の道を探り、サロン開設と出前コンサートに落ち着いた。コンサートには十数台を持参し、30分前後、各種オルゴールを演奏。次いでオルゴールの伴奏による歌唱、踊り、あるいは難病体験などの話を交えることもある。

 この3年間、なんと計300回もの出演。出張先は京都市内を主として保育園、幼稚園、小中学校、病院、デイケアセンターから個人宅までに及んでいる。

 コンサートを鑑賞した子どもたちから、難病をかかえる辻井さんを励ます千羽鶴や、感想文、寄せ書きなどが送られていて、互いの交流が生まれている。

 一方、サロンは火、金、土、日曜に予約制で開いている。希望者には一部のオルゴールを貸し出している。

 コンサートのボランティア協力者が現在4人。その1人、西泰子さんも病気により教職を早期退職している。「オルゴールを通して、いろんな人に出会え、つながっていける。演奏のあとの笑顔がすてき。みんなも私も幸せになり、元気をもらっています」と、張り切っている。また、主婦の清水りゅうこさんは「あちこちで、子どもやお年寄りなどに、すごく喜ばれていて、私もともに喜べます。人とふれあいながら、互いにエネルギーをいただくようです。これからも、ずっと続けていけたら」と望んでいる。

 辻井さんは「私たちのボランティアはささやかなのですが、オルゴールの音色が、子どもたちの感性に届いたらと願い、また高齢や病などに悩む人たちに喜びや癒やしのひとときをもたらすことができたら」と、思いを託している。

<メモ>オルゴール・サロン・ヒロ
京都市上京区大宮通寺之内上ル西入ル3丁目歓喜町252 TEL075(441)0964