ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


特定非営利活動法人 アンビシャス


 愛犬とともに町づくりを―。京都市の特定非営利活動法人アンビシャスは、ユニークな活動を進めている。犬を連れての町中パトロールをはじめ福祉施設でのドッグセラピー、公園の清掃や子ども教室の開催など、ペットとともに市民活動をくりひろげている。動物とふれあいながら、「あったか色のまちで暮らしたい」と会員たちは、地域づくりの新たな輪を広げている。

愛犬と豊かな町づくり 巡回やセラピー活動

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トレーニングによりおだやかに応対する犬たちとふれあうお年寄りたち(特養老人ホーム・ヴィラ上賀茂)
 この法人は5年前、「いつまでも安心して暮らせるまちをめざす」などを目的にし、愛犬家を主にして設立。現在、会員は約20人。地域のさまざまな人材が集まる仲間づくりとともに、地域の課題に取り組める環境づくりをめざしている。

 その一例が「ワンワンパトロール」。会員のほか協力者約180人が参加し、それぞれ近くの町を犬とともに散歩しながら、子どもたちの通園・通学の安全を見守り、同時に不審者を見回り、安全・防犯活動に役立っている。パトロールには共通の緑色の腕章を着用、あちこちですっかりおなじみになっているという。

 一方ドッグ・セラピーでは、犬とともに高齢者福祉施設や病院を訪れる。お年寄りや患者さんらとふれあい、癒(いや)しによって支援する。今は毎月、3カ所で定期的に行うほか単発の慰問も相次いでいる。

 先月、京都市北区の特別養護老人ホーム・ヴィラ上賀茂でのセラピーをのぞいてみると、広い集会所に集まる人たちは、ほとんどが車いす利用者。会員たちが連れてきた大小さまざまな犬に対面して、すぐに手を出して抱いたり、なでたりする人たちもいる一方、こわごわと眺めているだけの人まで、多様な親しみぶり。

 92歳のおばあさんは「以前、家で犬を飼ってたので、こうして犬に会えるとうれしい。犬と過ごしたむかしの日々が懐かしくなります」と膝(ひざ)の上に犬を抱いたままで話す。

 セラピーを受け入れている市柊野特養老人ホームの池田博一施設長は「人により、画一的ではないですが、犬による和みは独特の効果があります。童心に返り、心安らぎ、表情豊かに和まれます」と歓迎する。

 このほか2カ月に1回の京都御苑の清掃や、夏休みに子どもが動物に親しむ学習教室の開催、大学生や社会人向けの社会教育なども行っている。

 会員の一人、会社員の永見真利子さんは「犬を介していろんな人に出会えて、楽しい。祖父母を亡くしたかわりに新たな地縁に恵まれ、私の方がセラピーされているみたい」と愛犬の持つ力を認めている。会社員の安田孝さんは「犬のしつけ教室に通った後、4年前からセラピーに参加しています。犬に出会った人に喜んでもらえるのが最高ですね」と言う。

 同法人理事長の松岡幸子さんは「いろんな人たちとかかわり交流しながら、自分のできるボランティアを見つけ、肩に力を入れず地道に続けることができたら、いいですね」と話している。

<メモ>特定非営利活動法人 アンビシャス
京都市中京区西ノ京内畑町26 TEL075(812)3897