ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


特定非営利活動法人 滋賀大キッズカレッジ


 学習につまずいている子どもたちの強い味方へ―と、特定非営利活動法人滋賀大キッズカレッジは、2005年、滋賀大教育学部(大津市)に設立された。同大学付属の教育実践総合センター教育相談での長年にわたる試みと成果を生かし、子どもや親たち、教育関係者に向けて新たな市民活動を開始。不登校・登校拒否や学力不振、発達障害などに悩む子どもたちの教育ニーズに支援の手を伸ばしている。

教育相談と学習指導 学習障害など専門的に対応

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子ども1人ずつをマンツーマンで学習支援するキッズ教室(滋賀大教育学部)
 この事業は、教育相談と学習指導を2本柱としている。相談では学習障害はもとより多動性などの発達障害や不登校などにも専門的に対応する。こういった相談機関が少ないため、県内はじめ京都、大阪からも来所がある。依頼者の多くは「子どもの学習にどう対応していいのか分からない。いい方法がないか」などと訴えている。昨年4月から半年間の新規相談は約40件で、件数は近年、増加傾向という。

 同法人では専門スタッフを整え、相談のあと、読み書き・算数の最も基礎的な学力を検査(アセスメント)し、この結果と親の要望を考えあわせ、当該学校との連携やキッズカレッジ学習室への通所などの事後対応をしている。

 学習室は滋賀大で月2回と月1回コースを開設、またJR大津駅前の同大サテライト・プラザで毎週1回の中学生教室、さらに昨春から近江八幡市で民家を借りて週1回、相談と教室を開いている。現在、教室に通う児童・生徒は計59人だ。

 教室は児童・生徒1人にスタッフ1人が付くマンツーマン方式。現役や退職の教員、大学院生などボランティアスタッフ約20人が研修を受けて、子どもたち1人ずつにマッチした学習を支援する。その特徴は「子どもの安心と自尊心の確立」を最も大切にすることだ。スタッフは、学習指導中はできるだけしゃべりかけずに見守り、各人の学習ペースを大事にし、子どもたちに自発性を促している。このため、子どもたちからは「途中で口出しされることがなく、ゆっくり、自分で考えられるのがいい」という声が多く聞かれる。

 窪島務理事長(滋賀大教授)は「これまで、わが国では学習障害について、しっかりした取り組みが乏しいまま経過してきています。英国では就学時に子どもたち全員をスクリーニングし、その後の措置を講じているという例に比べても、日本は、かなり、立ち遅れています」と指摘する。学習教室の成果について「子どもたちが多動だったり、こだわりがあったり、あるいは不器用だったり、さまざまな特性があっても、学習指導をしっかりすると、次第に勉強がおもしろくなり、かなりの子どもたちが落ち着いてきます」という。

 小学生の時から学習室に通い始めたある子どもが、既に高校に進学し、前は手を出さなかった宿題まで意欲的に取りくんでいる、という到達事例が生まれており、キッズカレッジは社会貢献へのステップを地道に刻んでいる。

<メモ>滋賀大キッズカレッジ
大津市平津2の5の1、滋賀大教育学部窪島研究室気付 TEL&FAX 077(537)7747