ともに生きる・福祉のページ
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
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社会福祉法人 滋賀県聴覚障害者福祉協会


 盲導犬といえば、今ではあまねく知られているが、さて聴導犬といえば、どうだろうか? 近くにいる犬が聴覚の不自由な人たちの耳の代わりをして、その生活を支援する。そんな働きをするのが聴導犬である。社会福祉法人滋賀県聴覚障害者福祉協会は、厚労省の委託により本年度から聴導犬普及のためのモデル研究に着手。さまざまな生活音を聞きつけ、音源まで誘導するといった聴導犬の活動や役割について調査・研究している。

聴導犬普及へ調査・研究 訓練重ね中間的な成果

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当事者、トレーナー、手話通訳を交えた聴導犬の訓練
 2002年に施行された身体障害者補助犬法では補助犬として盲導犬、介助犬、聴導犬の3種が挙げられている。これにより聴導犬の育成が始まり、現在、全国では19頭が活躍中で、滋賀県では1頭だけにとどまっている。

 制度が発足してから7年を経ているものの、普及は遅々としている。当事者の日常生活では、ドアホンの代わりにパトライトの導入といった電動や光学利用の補助具が身近になり、その必要性が感じられないという一面があるのは否めない。その上、実際に聴導犬の活動例を見る機会が少なく、当事者にすら、なじみが薄く、そのニーズのイメージがとらえにくいなどの事情があるようだ。

 同協会では昨年7月から計9頭の犬の訓練を、守山市の障害者福祉サービス事業所で週1回、続けている。同所の利用者と訓練犬、トレーナー、手話通訳を含めた複雑な共同作業だ。その一例では、ユーザーの携帯電話のベルが身近な机上で鳴りだしたのを犬が聞きつけると、ユーザーにすぐに知らせ、机まで誘導していく。申し分ない立派な支援が実現する。

 訓練当事者の渡部和代さんは「今は家に子どもがいて、目覚まし時計の代わりに起こしてくれ、また来客のブザー音も知らせてくれます。子どもが成長して家を去る時には、その代わりとなり、また病院での名前の呼びだしを犬が教えてくれたら、と期待したいです。将来、ぜひとも必要です」とニーズをとらえている。

 トレーナーの高畑五朗さん(栗東ドッグスクール)は「補助犬のトレーニングは人や社会に迷惑を掛けず、人への服従心を養う訓練を主にしています。その上に聴導犬の場合は、いつ発されるか分からない生活音を聞き、自主的に判断し行動する訓練が必要になります。同時にユーザー側の意識を高めることが欠かせません」と、緊密な関係作りに努めている。

 これまで30週の訓練を経て、調査・研究の中間的な成果が出ている。担当の中村正さん(同法人副理事長)は「普及のためには、聴導犬の訓練到達度に高いハードルを設けるよりも低めにして、気軽に利用できる方が望ましいでしょう。ついで、当事者が犬の成育と訓練に立ち会う方が、さまざまな点からベターだと分かりました。また訓練過程を通して当事者の意識や責任感が育ち、自立性や社会的精神の進展などが期待できます」と話している。

<メモ>滋賀県聴覚障害者福祉協会
草津市大路2の11の33 TEL 077(561)6111 FAX(565)6101