ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
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こころのカフェ きょうと


 この10年以上、年間自殺者が3万人超で推移している。自死した人の後に残された遺族は大きな衝撃とともに深刻な余波も免れない。世の中に閉ざされ、こもりがちな遺族たちが、安心して語り、聞き合える場を―と、4年前、自死遺族サポートチーム「こころのカフェ きょうと」が京都に設立された。例会など話し合いの場を定期的に催しながら、シンポジウムや研修会の開催、さらには自治体への支援要望などの活動を進めている。

語り、励まし、立ち上がる 自死遺族支え合う場に

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研修会の講師の話に聞き入る参加者たち(京都市上京区、龍谷大セミナーハウスともいき荘)
 わが国の年間自殺者は1998年、初めて3万人を突破。以来、ずっと3万人台で推移している(警察庁統計)。その原因・動機については第一に健康48%、次いで経済・生活問題23%、家庭問題12%、勤務上の問題8%など(2008年)。このように自殺は個人の事情だけにとどまらず社会的な要因があることから、06年には自殺対策基本法が施行されている。

 この会の立ち上げに加わった石倉紘子さん(現代表)自身も、近親者の自殺に悩んだ人。「10年間、ひたすら周囲に沈黙を守りました。世の中から忌避され、嫌われていると思いこみ、時にはアルコールにおぼれたりしたのですが、阪神大震災の被災者の痛ましい体験を経て、次第に変わりだし、私と同じような思いを抱く遺族同士で何かできないか? 抱える思いをはき出し、堂々と生きていけるよう、互いの体験を分かち合える場を作ろう」と振り返る。

 現在、毎月1回の例会では参加者一同が話し合いをしており、これまでの参加者延べ800人。またお茶を飲みながら、こぢんまりと個別にスタッフと話ができるフリースペースを月2回、開催。ここへの参加者が延べ250人。参加者は京都、大阪など関西一円のほか全国28都道府県と広範囲に及ぶ。

 会合の設営、進行役や話し相手などスタッフが23人。その1人の中年女性は「遺族の方の話は重いのですが、こちらは気分転換などバランスをとりながら、大事な場を今後もサポートしていきたい」と話す。遺族でもある別のスタッフの女性は「この会で、やっと話を聞いてもらえ、また他の人の話も聞いて、心の整理ができた。人に言えない、長い間のもやもやが解け、ほっとしてます」と口調が和んでいる。

 今月中旬、催した研修会に招かれた講師石蔵文信さん(大阪大准教授)は、一般医と精神科医師との連携に力を入れ、「不安やストレスなど不定愁訴の段階で、一般医による一次予防が必要だ」と提唱する。自殺の未然防止のために大阪などで成功している医師や弁護士によるネットワーク形成の進み具合を報告、参加者の注目を集めた。

 5年目に入った経過について石倉さんは「会を重ねるうちに、遺族たちが自分を次第に取り戻し、事実を受け入れられるような過程を目の前にして、やはり会を作ってよかった、と思います。当分は会が必要でしょうが、ここに来なくても元気に生きていけるようになっていけたら」と、ポジティブに話している。

<メモ>こころのカフェ きょうと
京都市下京区梅湊町83、市民活動総合センターメールボックス TEL 090(8536)1729