ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
UP 地域の力

京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
地域の人たちの活動・話題をリポートします。


音楽劇団てんてこ


 大津市を拠点とする音楽劇団てんてこは、手づくり楽器によるユニークな演奏活動を、20年余、地道に続けている。どこでも身近にあるカン類はじめ牛乳パック、レジ袋や、バケツ、フライパンなど台所用品まで利用し、音を出す楽器を作り出す。それを、みんなで鳴らしてみる。演奏が上手でなくても、市販の楽器とは一味違った音、響き。音の持つ不思議な魅力をふりまいている。

感動呼ぶ手づくり楽器
音や響き、不思議な魅力


写真
手作り楽器のコンサートを楽しむ子どもと保護者たち(アヴェ・マリア幼稚園)
 今月初旬、京都市山科区のアヴェ・マリア幼稚園が企画した市地域子育て相談事業の催しに、てんてこが出演した。地域から就学前の幼児と母親ら57組と園児たちが鑑賞。ステージ上には色とりどりのフライパンが並ぶなか、メンバー3人がほうきで作った笛、水道管製のトロンボーン、ストローの笛など手づくり楽器を次々に鳴らして紹介。「猫ふんじゃった」、「ドレミの歌」などおなじみの曲を演奏しだすと、子どもたちは一斉に立ち上がって体を動かしたり、手拍子を打つなど、活気に満ちてくる。

 幼児を抱いたある母親は「思いもよらない音が出てきて、楽しめました。家に帰って、台所用品で音を出してみようかな」と喜んでいた。

 この劇団は、23年前、人形劇団京芸で作曲、舞台音楽を担当していた河合正雄さんら数人で結成。日常の生活で身近なものによって音を作り、感情や思いのこもった音楽により豊かな人間性を、と目標を掲げている。

 滋賀、京都など関西から北陸まで広域で活動、保育園、幼稚園、小学校や特別支援学校などの鑑賞教室はじめPTAや地域団体などの催しに、出演している。コンサートのほか手づくり楽器を作るワークショップも引き受けている。ストロー、空きカン、牛乳パックなど手近な日常品を利用し、笛、マラカスなど作る手ほどきをしている。  手づくり楽器は河合正雄さんが主に作っており、これまで完成した楽器が100種以上。その一部はDVDブック「手づくり楽器をつくろう」(音楽センター刊)に収録されている。

 現在のメンバー8人のうち、松井恵子さんと東山美砂子さんの2人はともに音楽家で、同劇団では2、3年の経験。「仲間といっしょに持参の楽器で演奏を始めると、子どもたちが驚きの表情から体を動かすなど反応してくれるので、やりがいを感じ、またやろうと元気になります」と息の合ったコンビぶり。また活動歴20年余の熟年男性で、愛称ジイジさんは、自分の口や鼻や手など身体を使って、さまざまな音を出す人気者。「体を使った音でも、こどもたちはうまく、まねて音を出して楽しんでくれます。音の魅力を本能的に分かるのじゃないでしょうか」と話す。

 マネジャー役の河合美紀子さんは「特別支援学校へ出かけることも多くて、ある時、重度の障害のある子どもが、バチを手にして打楽器をたたいて初めて音を出したことがありました。その子にとって貴重な音と、感動しました」と、新鮮な出会いを尊んでいる。

<メモ>音楽劇団てんてこ
大津市唐橋町7の41 TEL&FAX077(533)1662