ともに生きる・福祉のページ
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京都、滋賀で地域福祉を支えるNPO(民間非営利団体)や
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日本オストミー協会京都府支部


 日本オストミー協会京都府支部は、万一の災害に備えて人工の肛門(こうもん)、ぼうこうの補装具備蓄を、昨年末、京都市下京区の「ひと・まち交流館 京都」の防災センター倉庫で開始した。補装具は1日から数日以内に取り替えが必要で、生活保持に不可欠の必需品。先の阪神・淡路大震災の経験に基づき、同支部は、補装具を手近に確保、備蓄する保管所を探した末、同館の協力により待望の第一号備蓄庫を実現した。

災害に備え待望の備蓄庫
生活に不可欠な補装具


写真
第1号備蓄庫にオストミー補装具を収納する会員ら(ひと・まち交流館 京都)
 近年、がんなどの手術に伴ってオストミーの保有者が多くなっており、全国で15万人超(日本オストミー協会)。京都府内では約4500人と見られ、同支部に加盟している会員は240人。

 支部は会員の社会復帰の促進のほか生活向上、自立の推進などを目標として活動している。京都府委託事業を含めて、社会適応訓練講習会、相談会、日帰り旅行、年一回の総会などを催している。相談会は顧問医師や専門の看護師により、毎月1回、第2日曜日、京都市伏見区の増田医科器械で続けている。

 オストミーの補装具は腹部からの排せつ口に装着するもので、日常、肌身から離すことができない。それぞれに使用する機種がさまざまで、補装具も多種に及んでいる。このため各人に適応するタイプを、災害の際も確保することが課題となってきている。阪神淡路大震災の後、同協会兵庫県支部が被災会員を調べた結果、最も困ったこととして入浴39パーセント、洗腸12パーセント、補装具の入手9パーセントと判明した。とくに家屋の損壊に伴い補装具を持ち出せない事態への対応が求められるとしている。

 第一号庫は、格納ケース2個に各人ごとの補装具などを入れた個人バッグ(A4サイズ)をまとめて収納する方式。同倉庫は、身近な地域の下京、南、東山、中京の各区と近隣周辺に在住する会員計59人を対象としている。備蓄量はライフラインの復興予測を見込んで1カ月分としている。昨年末には、希望者が既に収納を済ませ、将来の災害に備える体制を整えた。

 この間、同支部では会報(隔月刊)などを通じて、各人が自宅に補装具を保管して備える自助、仲間同士の助け合いの輪を作る共助や災害時の緊急配備・輸送という公助などの措置を呼びかけてもいる。その公助施策として10年前に京都府医療機器協会との間で、災害時の医療救護活動に必要な医療用品の供給について協定を結んでいる。

 同支部の田桐敬三会長は20年前のがん手術のあと、オストミーの使用者。「毎日、オストミーを使うものとしては、補装具は度々取り替える消耗品ですが、三度三度の食物と同じくらいに大事な物です。命の保持に関わるものですから、災害時の備えができると、一層、安心できます」と喜んでいる。今後、同支部は府内の自治体、団体などに協力を呼びかけ、各地に備蓄庫の増設を進めるとしている。

<メモ>日本オストミー協会京都府支部
京都市西京区桂市ノ前町11―6 田桐さん方 075(381)4365