ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

病は正常

総合人間研究所所長
早川一光
ぼく、今まで60年も、たくさんの人さま―人間―を診てきました。
生まれるところから、病気の床R老いの姿から、呆(ほう)けの様子、そして、いよいよ別れの枕辺によりそって、じっとその様子を見つめてきました。
そして分かったことは
生も病も 老いも呆けも 死も 全く
誰も避けて通れない道だった、と―。
王侯貴族、金持貧乏、老若男女、一切関係なし。
皆、この道をひとり歩んでいくんだ、というコトだと…。
それが、この84歳になって、ようやく分かってきました。
我ながら、ちょっと手遅れでした。
病―やまいだれ―、実は床・ベッドの姿です。
丙―は人間が動けなくなって手足をツンと伸ばしている姿です。
従って病とは、人がジッと床の上に横たわる姿の字です。
人間、病気でなくても1日8時間は、この姿をとります。
動けなくなるというよりは、動いたらいけない位置をとります。
それは臓物の故障の時も、また、生まれてすぐの時も、また、動いて動いて働いて働いてきた末、年をとって自然に“動けない”姿になること…いろいろです。
でも、みんなが必ず来た道、来る道であれば
それはそれで、“当たり前”“正常”だと見ましょう!
病人を異常―常でない変な人―と見るのでなくて“それでいいんだよ”と見る目…。
これがとても大切です。さあ、上手に病とつきあっていきましょう―。
病を気にした時が「病気」です。


はやかわ かずてる氏 1924年愛知県生まれ。
京都府立医科大卒業。50年、西陣に住民出資の診療所創設。その後、堀川病院に発展し、院長、理事長を歴任。南丹市美山町の診療所長も務めた。著書に「わらじ医者京日記」など。