ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

大活躍の日本選手団

立命館大名誉教授
芝田徳造

 去る3月中旬、トリノ冬季オリンピックの後で「もう一つのオリンピック」と呼ばれる冬季パラリンピック(障害者の冬季オリンピック)が行われました。
 この大会に参加した日本選手団は、前回の3個を大きく上回る金2個、銀5個、銅2個のメダルを獲得し、日の丸を9回もポールに掲げました。これは荒川選手の金一個だけという一般オリンピックの成績とは大変な違いです。ところがこのことについて、テレビなどでの報道は、ほんの少ししか行われませんでした。
 これは日本の障害者スポーツの歴史が、欧米より短いところからきていると考えられます。日本の障害者のスポーツはその本格的実施が1964年の「東京パラリンピック」以後で、まだ40年ほどしか経っていません。これはすでに100年以上の歴史を持つ欧米とは大きく異なり、この歴史の短かさが国民一般の認知度の低さにつながり、それがさらに報道機関の関心の低さにも反映しているのです。
 この認知度の低さは、スポーツに取り組む障害者への支援にも、欧米とは大きな隔たりをもたらしています。欧米ではプロとして企業の支援を受けている選手が多く、またさまざまな形の国家的支援が行われていますが、日本ではそれらは皆無に近い状況です。前述のトリノ冬季パラリンピックで金、銀3個のメダルを獲得した大日方選手も「経済的理由でスタート台に立つことすらできない選手もいる。選手に負担を強いる日本のシステムは眼界にきている」と話しています。
 障害のある人々が、障害を乗り越えて果敢にスポーツを行う姿は、一般のスポーツ以上の大きな感動を国民に与えます。今後、企業や行政機関、そして国民の物心両面にわたる温かい大きな支援が望まれます。


 しばた とくぞう氏 1926年京都府生まれ。立命館大法学部卒業。立命館大教授、京都障害者スポーツ振興会会長などを歴任。現在、立命館大名誉教授、日本身体障害者陸上競技連盟会長。著書に「スポーツは生きる力」ほか。