ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

老けるってね

総合人間研究所所長
早川一光
老(お)いと、老(ふ)けとはちがいます。
 「先生! どうちがうんです?」
 「老いは正常ー、老けは…年不相応に老いてみえる時…、やはり異常ー や」
 「なぁるほど!老いはみんな必ず来る道ー、それじゃ老けは?」
 「吹(ふ)ケバ飛ブヨナ ショーギノコマニ カケタ命ヲ 笑ワバ笑エ…」
 「センセ! 歌でごまかさないで。まじめに聞いてんのです!」
 「ま、ま、怒らんと静かに聞けよ。ふけってナ、『この間、京都新聞を読みフケってたら、一駅乗り越したー』」
 「それは“老け”でのうて“耽(ふ)け”!」
 「この間、さつまいもがようフケて」
 「それは“蒸(ふ)け”!」
 「この間、友だちと飲んでたら、夜もフケてな」
 「それは“更(ふ)け”!」
 「そんだけよう知ってたら、人にものを聞くなー」
 要するに
 老けるって、生きる活力を失って、身も心もくずれた時…。
 人間ってナ、生まれたらいろんな病を乗りこえて、ハッと気がついたら老いていく、この長い人生の廊下を歩いてゆかねばならんのじゃー。
 必ず渡る老化ー廊下ーだから、何もあわてる必要はない、ゆっくり、ゆっくり、一歩一歩気をつけて、こけんように歩くこと。
 この廊下は、時によって、また、所によって上り下りがあり、ちょっとした段差もある。
 つまづかないよう、落ちこまないよう
・自分の身体は自分で守る
・自分たちのくらしは自分たちで守る
んだと、みんなでこの廊下を渡ることー。しっかりと前をみつめて、すぎたあとを振りかえらないことー。
 お分かりかな?ー。


はやかわ かずてる氏 1924年愛知県生まれ。
京都府立医科大卒業。50年、西陣に住民出資の診療所創設。その後、堀川病院に発展し、院長、理事長を歴任。南丹市美山町の診療所長も務めた。著書に「わらじ医者京日記」など。