ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

感動生む障害者シンクロ

立命館大名誉教授
芝田徳造

 さる5月14日、京都市障害者スポーツセンターで「障害者シンクロナイズド・フェスティバル」が開催され、15回目の記念大会ということで、カナダから演技者1人と役員2人が特別に招待もされました。
 当日は、カナダの女子大生(車いす使用)の招待演技を含む42の演技が行われ、そのすばらしさに会場は終日感動と興奮に包まれ、大きな歓声と割れるような拍手がいつまでも鳴りやみませんでした。
 この催しがなぜそのように大きな感動を生むのでしょうか? その原因の第一は『水』の持つ特性です。シンクロナイズドという語は「同調」という意味を持ち、ここでは水と音楽と人との同調を意味します。
 その中で『水』のもつ「浮力」は重度の障害のある人に陸上では不可能な動きを可能にします。そして、障害が極めて重い人にも、ほんのわずかな力で多様な行動を可能にし、さらに音楽との同調により見る人に大きな感動を与える演技をつくり出すのです。
 2つ目は障害のある人と障害のない人との協力(人と人との同調)から生まれる大きな効果です。この大会のデュエット以上の団体演技では、障害のない人(チームの半数以下)との共演が可能とされています。
 このことにより、障害のある人には、自分一人ではできない「自己表現」を可能にします。これが見る人に感動を与えるだけでなく、障害のある人には大きな達成感と生きる勇気と夢を与えるのです。
 このシンクロは、京都障害者スポーツ振興会の女性指導者(元シンクロ選手)の献身的な努力と、その賛同者の協力により、京都から日本全国に広がったものです。同指導者は、これを海外にも広げるため「国際水泳医科学研究大会」で特別報告もされています。


 しばた とくぞう氏 1926年京都府生まれ。立命館大法学部卒業。立命館大教授、京都障害者スポーツ振興会会長などを歴任。現在、立命館大名誉教授、日本身体障害者陸上競技連盟会長。著書に「スポーツは生きる力」ほか。