京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●コラム「暖流」
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。 子どもってさ 総合人間研究所所長
早川一光
「先生! もう、子供ほどわずらわしいものはオヘンなァー」
「何がわずらわしい? あんなかわいいものありませんわナ」 「どこがかわいらしい?…“コッチ来い”言うたら、アッチ行きおる。“アッチ行け”と言うと、コッチへ来おる! 腹が立つう〜」 「あんたも子供の時、そうだった!」 「いえ、先生! とっても素直―親の言うことよう聞いて…」 「うそ言え! あんたの親が、もう家(うち)の子は―とコボしてたわ」 「先生! わしの子供の時のことは言わんといて!」 「アカン! わしは何でも知っている―。もう、あんたのじいさんも、ばあさんも診てきたし、お前のおやじもおふくろも診察してきた。あんたで3代目や」 「そう言われれば、仕方ない!」 そう言えばそうや。もう60年も西陣に働く人たちを見つめてきた。 生まれてきた赤ん坊は、もう“寝たきり”―。腹がへったら泣くばかり、自分で小便いきよらんと、おむつの中で平気でしおって…。 濡(ぬ)れたというて、ギャー。 汗ぼがかゆいと、ワァー。 夜中に何回も起こしおって…。 いや、よう考えたら、己も全く同じ道を、同じように歩いてきた。 親はそれを“よし! よし!”と声をかけてくれて世話してくれた。 よしと言うのは“いいよ、いいよ”というコト―カマヘン、カマヘンというコト―ソレデイインダヨという事―。そういうもん! それが当たり前、それが正常なんだという“ゆるし”の言葉…。これで子が育ったんだよなァー。 子供叱(しか)るな、来た道じゃ。 年寄りいたわれ、ゆく道じゃ。 はやかわ かずてる氏 1924年愛知県生まれ。 京都府立医科大卒業。50年、西陣に住民出資の診療所創設。その後、堀川病院に発展し、院長、理事長を歴任。南丹市美山町の診療所長も務めた。著書に「わらじ医者京日記」など。
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