ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

人間の祖先はサルか

PHP総合研究所社長
江口克彦
 人間はサルから進化したというのがダーウィンの進化論。日本では常識のようになっているが、アメリカでは、それは必ずしも正しいとは言えないのではないか、と批判する意見が多くなり、ついには学校教育でも、そのような考えではなく、インテリジェント・デザイン論、すなわち「なんらかの知的存在が人間を作った、デザインした」という考えを取り入れるようになったという。
 確かに進化論といっても、それが実現したところを誰も確認していないし、確認できる時間的過去において、進化論を実証するような現象は起きていない。ダーウィンの進化論もひとつの仮説に過ぎないということである。
 「動物園のサルが人間になったという話は聞いたことがないなあ」と言って松下幸之助が呵呵(かか)大笑したことを思い出した。サルは最初からサル。人間は最初から人間。決してサルから進化したのではないのかもしれない。もちろん、人間は人間として進化変化はしてきたかもしれないが、サルからの変化進化ではない。
 しかし、いま、アメリカで広まっている「知的存在が人間を作った」というのも仮説。どちらも仮説で、実証されたものでも科学的なものでもないとするなら、人間が、幸福になるような仮説を、われわれは選択したほうが賢明かもしれない。
 ならば、人間はサルから進化したのではなく、知的存在が最初から人間を人間として存在させたという考え方をすべきだろう。そう考えることによって、人間は人間としての尊厳を意識し、その尊厳にふさわしい行動をとろうとするのではないか。
 人間は人間、獣は獣と冷静に理解し、知的存在から与えられた尊厳をもって、世界平和を考えれば、そこにまた新たな道も開けてくるのではないだろうか。


えぐち かつひこ氏 1940年名古屋市生まれ。
慶応義塾大法学部卒業。松下電器産業入社後、PHP総合研究所秘書室長、副社長などを経て2004年同研究所社長に就任。
著書に「心はいつもここにある―松下幸之助隋聞録」ほか。