ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

理解できない「拉致」


PHP総合研究所社長
江口克彦
 拉致問題の報道はいつも悲しい。娘めぐみさんを北朝鮮に拉致された横田夫妻が12月23日上洛。ノートルダム女学院の招請で京都ノートルダム女子大学のユニソンホールで午後1時半から一般公開(入場無料)で講演される。

 いたいけなわが娘が忽然(こつぜん)と姿を消したときのご夫妻の戸惑いと不安と悲しみはいかばかりであったか。そしてめぐみさんが北朝鮮に拉致されたことがわかったときの驚きと怒りと苦しみは、いまもって筆舌に尽くしがたいだろう。

 私には、いまだに北朝鮮の『拉致』という愚行が理解できない。何10人も日本人を何の理由で拉致したのか。なかには日本語を北朝鮮のスパイに習わせるためだという人もいるが、それなら、標準語を話せる東京の人で、30代、40代ぐらいの日本人のほうがいいだろうし、そのようなことをしなくても日本語を日常的に、日本人より上手に話す在日朝鮮人はいくらでもいる。その人たちを活用すればいいのであって、なにも日本人を拉致するまでもあるまい。いや、日本の情報を入手するためではないかという人もいるが、これも新潟や富山などの地方の人よりも、かなりの知識人を拉致し手練手管で籠絡(ろうらく)させ、「北朝鮮シンパ」を養成するほうが賢明と言うものだろう。なにゆえに地方の、ましてめぐみさんの場合は13歳。なんの役に立てようと拉致したのだろうか。拉致されたご家族の心境は、胸張り裂ける思いだろう。1日も早く拉致被害者の皆さんが無事帰国されることを祈るばかりである。

 そのご家族方の代表的存在である横田滋、早紀江ご夫妻の講演をお聞きし、われわれも拉致問題をわがこととして取り組んでいきたい。
 なお、問い合わせ先はノートルダム女学院 TEL.075(723)1072



えぐち かつひこ氏 1940年名古屋市生まれ。
慶応義塾大法学部卒業。松下電器産業入社後、PHP総合研究所秘書室長、副社長などを経て2004年同研究所社長に就任。
著書に「心はいつもここにある―松下幸之助隋聞録」ほか。