ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

老いってね

総合人間研究所所長
早川一光
老いって“年をとる”ということ―。
とる、ということは、加え算です。取り去るわけにはいきません。
明らかに“引き算”ではありませんね。
お母さんから生まれたものは、みーんな、ぜーんぶ、もれなく年をとります。
みんなが行く道、通る道であれば、それは当たり前の道―正常―なんです。
老いない人の方が、異常です。 だから、安心して老いて下さい。胸を張ってね。
そうそう、思い出しました―。
老いという字は、あなたの“姿勢”をあらわしています。
若い時は、ソラ、こんなにシャンと首筋を伸ばし、あごをひいて、背すじを張って、ひざをしめて…。
それがね、いつの間にか、コウ
背が曲がり、ひざがゆるみ
さらに髪の毛はのび乱れ
さらに、つえをつき とうとう老となります。
老いという字は、人の姿を表しています。ついで勢いを失っていきます。
みんなが生まれた時から“老い”がうしろからついてきます。まだ遠い間をおいて―。しかし、必ずどこへ行くにも追いかけてきます。
だんだん距離(へだたり)をちぢめてきます。そしてある日、ある時、あなたのすぐうしろまで近づいてきて、あなたの肩をポンとたたいて
“おい!”といいます。
びっくりしてあなたが振り返ると、老いがスーッと顔をのぞかしてきます。
それを見て、あなたはびっくり仰天!
それをオイル・ショックと申します。


はやかわ かずてる氏 1924年愛知県生まれ。
京都府立医科大卒業。50年、西陣に住民出資の診療所創設。その後、堀川病院に発展し、院長、理事長を歴任。南丹市美山町の診療所長も務めた。著書に「わらじ医者京日記」など。