ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

着物暮らし

コラムニスト 木下明美
 さて、何から書き始めようかしらと思案した結果、今プチブームにもなっている着物について書くことにしました。
 明治生まれの夫の母は夏を除いて着物で過ごしていたひとで、新門前の片山家に通う謡(うたい)の稽古、観世会館でのハレの着姿はさすが着物が板について奇麗でした。前日着て来た着物を縁側で半日陰干して丁寧に後始末していた姿は覚えているものの、普段には何を着ていたのかさっぱり記憶に残っておりません。格好の着物先達と26年も暮らしながら、30、40代のころの私は、ちゃらちゃら着物なんて着られるかものか!との思いが強く関心がなかったからでしょう。
 ところが、義母を見送ったあと、タンスを整理するうちに着物に取りつかれたようにひどい着方もおかまいなく町に出かけ、いまでは街着としてはもちろんのこと仕事シーンでも着ております。わが着物師匠のM美社長、着物先達のS子常務をはじめすてきな着物フレンドにも恵まれ、先日は日本画家だった義父が描いたと思われる自慢の夜桜の帯を結び、女は変化自在、変われば変わるものです!
 たぶん時間と気持ちのゆとりができた50代だからこそ、着物に出会えたのだと思います。昨秋には泥大島をバッグに詰めて青森まで飛んだところ、講演のあと大勢の方が近寄って来てくださいましたし、「京都」「きもの」はどこでも話の糸口になってくれます。
 「老後は手持ちの着物を着まくって着物道楽しよう!」と昨秋開設した着物ブログ「京都で、着物暮らし」は海外読者も増え、それに和服は健康ファッションという効用もあり。帯はコルセット、草履は外反母趾(ぼし)予防にもなる…。あとはこちらで。http://blog.goo.ne.jp/ake149


きのした あけみ氏 1946年京都府生まれ。大阪女子大国文学科卒業。本の情報誌「ウイメンズブックス」初代編集長を経て、現在はコラムニスト・ジャーナリストとして活躍中。著書に「女の言葉が男を変える」など。