ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

チェアスキー

立命館大名誉教授
芝田徳造
 昨年の2月中旬、イタリアのトリノで冬季パラリンピック(障害のある人々の冬季オリンピック)が開催され、日本は40人の選手を派遣しています。

 その選手団の主将が大日方邦子選手で、彼女は同大会で金1個・銀2個合計3個のメダルを獲得し、日本選手団の総合八位の成績に大きく貢献しました。

 同大会では、彼女を含む6人の日本選手が「チェアスキー」による競技をしていますが、このスキーは車いすの車輪をはずし、いすの下にスキーのそりを一本だけつけたものと考えていただけばよいと思います。

 選手はこのいすに座り、両手にストック(先に小さなそりのついたもの)を持ち、3本のそりを駆使しながら斜面を滑降するのですが、その滑降が実にスゴイのです。

 私もその様子を何度も見ましたが、急斜面を雪煙をあげながら一気に滑り降りるその姿は、まさに勇壮そのものです。これが日常は立って歩くことさえできない人とはとても思えません。

 その姿から、障害を乗り越えて生き抜こうとする強い意志と、たくましい行動力をひしひしと感じます。そして「人間て、スゴイ力を持っているなあ」と、つくづく思いました。

 またこのようなスキーを考え出した人々も、素晴らしいと思います。障害のある人々のスポーツには、このほかにも種々の工夫がなされています。それは、障害のある人々に「たった一度の人生を、精一杯豊かに生きて欲しい」との願いからつくり出されたものです。

 この願いがさらに「共に生きる運動」(ノーマライゼーション)へと発展しました。この運動が進めば、障害のある人や高齢者も、さらに住みよくなると思います。


 しばた とくぞう氏 1926年京都府生まれ。立命館大法学部卒業。立命館大教授、京都障害者スポーツ振興会会長などを歴任。現在、立命館大名誉教授、日本身体障害者陸上競技連盟会長。著書に「スポーツは生きる力」ほか。