ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

全国車いす駅伝

立命館大名誉教授
芝田徳造
 さる2月25日、「第18回全国車いす駅伝競走大会」が、京都国際会館―西京極陸上競技場間で行われ、全国から32チーム310人の選手が参加しました。そして大分Aチームが史上初の8連覇を達成し、わが京都Aチームは事故に巻き込まれ入賞はなりませんでした。

 この大会は、昭和63(1988)年秋にこの京都で開催された「第24回全国身体障害者スポーツ大会(愛とふれあいの京都大会)」で、全国初の公開競技として行われた「車いす駅伝競走」の開催を記念して、同大会の翌年度から開催され始めたものです。

 開催のきっかけは、前記第24回全国大会閉会式直前の役員控え室にありました。控え室で荒巻禎一京都府知事、今川正彦京都市長と筆者らが閉会式を待っていました。そこへ車いす駅伝の京都チーム最終ランナー吉松選手が、トップで競技場に入ってきたのです。

 その光景を見ていた知事、市長、筆者の3人の口から異口同音に、「この駅伝を全国高校駅伝、全国女子駅伝に加えて、京都三大駅伝の一つにしてはどうか?」という言葉が出てきました。その後、京都府、市で積極的な検討が行われた結果、平成2(1990)年から開催され始めたものです。そして現在、日本ではただ一つの「全国車いす駅伝」として、障害のある選手たちを大きく励ましています。

 毎回この大会は、京都陸協審判員を始めとする数千人のボランティアが支援し、沿道では数万人の京都市民が声援します。その前を選手たちが猛速度で走り抜けていくのです。その姿を見てボランティアと市民は大きな感銘を受けるとともに、障害のある人々を見る目が変わります。また選手たちはその中で、生きる自信と勇気を得ます。この大会には、計り知れないほどの大きな意義があります。


 しばた とくぞう氏 1926年京都府生まれ。立命館大法学部卒業。立命館大教授、京都障害者スポーツ振興会会長などを歴任。現在、立命館大名誉教授、日本身体障害者陸上競技連盟会長。著書に「スポーツは生きる力」ほか。