ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

さらにいい方法がある

PHP総合研究所社長
江口克彦
 随分と以前のことで、正確ではないかもしれないが、次のような話をなにかの雑誌で読んだことを記憶している。アメリカの漫画の話であるが、ある新婚夫婦の家庭で奥さんが感謝祭のためにローストターキーを料理した。その料理している妻を夫が見ていると、妻が七面鳥のお尻の部分をばっさり切り落としてオーブンに入れている。オーブンは七面鳥をまるごと入れるには十分なほどの大きさなのにである。

 不思議に思った夫が「なぜ、そんなもったいないことをするの?」と妻に聞くと、妻は「お母さんから教わったの」となんの不思議もなく答えた。そこで夫は妻の母親に電話して尋ねた。すると、母親は「おばあさんから教わったのよ」とこれまたこともなげに言う。夫はそこでおばあさんに「なぜ、あなたの家では代々、七面鳥のお尻を切り落とすのですか?」と聞いてみた。すると、おばあさんが「馬鹿だねえ、お前たちは。それは私のオーブンが小さかったからよ」と言った。

 まあ、そのような内容だったと思う。しかし、われわれはこの漫画の話を笑うことは出来ないのではないか。私たちも案外このような人生の生き方、仕事の仕方をしているのではないかと思う。

 昔から続いているからということだけで、同じことを繰り返している。なにかおかしいな、なにか変だなと感じながら、まあ、いいかという気持ちで、そのおかしなところ、変なところを確認する努力をしない。理不尽な、非合理な、非効率な生き方、仕方をしている。

 トーマス・エジソンの言葉に「さらにいい方法がある。それを見つけよ」とあるが、つねに、今以上のやり方、考え方があると思いながら、日々を過ごすことが大切ではないだろうか。


えぐち かつひこ氏 1940年名古屋市生まれ。
慶応義塾大法学部卒業。松下電器産業入社後、PHP総合研究所秘書室長、副社長などを経て2004年同研究所社長に就任。
著書に「心はいつもここにある―松下幸之助隋聞録」ほか。