ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

日本一の助け合い

さわやか福祉財団理事長
堀田 力

 全国レベルでは非常に有名なのに、地元の京都人には案外知られていないという活動が、福祉の分野でも、いくつかある。順次紹介しようと思うが、今回取り上げるのは、上京区の春日学区である。

 春日学区の名が全国に知られたのは、住民たちの緊密な助け合いのネットワークの素晴らしさである。

 まず目に付くのが、災害発生時の助け合いマップだ。地域の地図に一軒ごとの名前が記入してあり、そこに、身体の不自由な高齢者だけのお宅など、ご近所の助けを要する家には、色で優先順位がつけてある。この個人情報のうるさい時代、そんな地図を全戸配布していいのかと思う人もいるであろうが、名前の公表を拒む人のお宅は、地図上はガレージになっている。住民の知恵である。

 御所の東側に位置する春日学区には、消防車が入れない路地もある。昭和54年、そこの火事で一人暮らしの高齢者が亡くなった。それを機に、住民たちがつくったのがそのマップで、2年ごとに更新されている。

 助けを必要とするお宅の状況がわかると、そこは人情で、見守り訪問をしよう、配食もしよう、サロンの集まりに誘いに行こうなど、さまざまな動きがはじまり、それをうまくリードする人も出てくる。

 その人物が高瀬博章氏、83歳。NPO法人春日住民福祉協議会代表というといかめしいが、陽気で前向きで楽しいおやじさんである。彼のリーダーシップで、ふれあい広場、防災防犯教室、緊急通報システム、高度障害者支援、子どもの高齢者疑似体験、気楽に集まるミニケアサロンと、ご近所の助け合いは多方面に発展した。
 NPOの拠点は、河原町通丸太町角の元春日小学校。今は、地域包括支援センターと組んで、一人ひとりの高齢者を支える介護保険チームとボランティアらのネットワークができるところまで進んだ。私は、日本一の助け合いだと評価している。



ほった つとむ氏 1934年宮津市生まれ。京都大法学部卒業。東京地検特捜部検事、最高検検事などを経て、91年に法務大臣官房長を最後に退職。現在、ボランティア活動の普及に取り組む。弁護士。著書に「おごるな上司!」「心の復活」「少年魂」など。