ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

大人の女の条件

こどもみらい館 館長
浅野 明美
 わが家の中庭のコケは緑のビロードのように、光沢を増している。梅雨の晴れ間に古い本の整理を少ししたが、ご多分にもれず、すぐに手が止まった。読んだころの印象や思い出がよぎるからである。「サザエさんの漫画みたいやね」と、生前の母とよく笑った。

 大阪育ちの母は、思春期に3度の空襲に遭遇した。雷鳴が轟(とどろ)くと「B29が来た」と押し入れによく避難した。戦前戦後の価値観の変化の激動期を、多感な時期にどう受け止め、乗り越えたのだろうか。母の口癖は「女は手に職を持たんとあかん」「何でも我慢が大事」「人に優しく自分に厳しく」等々。

 父の希望で専業主婦だったが、子育てを終えるころから華道や書道にいそしみ、人に教授することができるまで精進した。母の生けた玄関の花は絶えることなく美しく、四季の移ろいを教えてくれた。また、母の残した多彩な書は、私の大切な宝物である。

 戦後、女性自身の人生観は、社会経済の発展などの中で変化してきた。しかし、真にしんの強さのある女性の生き方は、どの時代にも共通し、不変であると思う。

 凛(りん)とした母の人生を思うとき、今の私はどうだろうかと、いつも問う。古い本の整理中に手を止めた1枚の書き写しメモを紹介する。

「大人の女」10の条件 森謠子(月刊カドカワ 91年6月号より)

memo
  1. 人のせいにせず、苦しみや痛みを自分で引き取る
  2. 仕事を持ち、夫に頼らないだけの収入がある
  3. 結婚している、または男と暮らしたことがある
  4. 子どもを産み、育てたことがある
  5. 男をすべて恋人とせず、友達づきあいのできる男がいる
  6. 1人でレストランやバーへ行って食事やお酒が飲める
  7. しゃれた会話ができるようなインテリジェンスがある
  8. 年齢を重ねていても決して感性が衰えない
  9. どんな時でも好奇心を持って接することができる
  10. 自分が不幸な状態にあっても人に対して優しくできる
 多様な考え方のある中で、「大人の女」とは…!?

あさの あけみ氏 1950年京都市生まれ。大阪医科大卒業。76年、京都市に入り、京都市立病院小児科に勤務。西京保健所長、南区長などを歴任。2003年、京都市子育て支援政策監就任。05年から現職。保健福祉局医務監兼務。