ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

特別支援教育がはじまった

精神科医 定本ゆきこ
 平成19年4月から、全国の公立の小・中学校、高校で特別支援教育がはじまった。

 特別支援教育とは、(軽度)発達障害を有する子どもたちに対して、普通学級において、なされるものである。(軽度)発達障害とは、知的な遅れを伴わない発達の偏りのことで、落ち着きがなくひとつの事に注意を集中することができなかったり、人とコミュニケーションをとることが苦手だったり、ある種の事にこだわりが強く、臨機応変の対応ができにくいなどといった弱点(特性)がある。

 今でこそ、随分市民権を得てきた感のあるこの特性だが、ほんの数年前まで、子どもたちが毎日生活する学校現場でも、十分には知られていなかった。わがままとか怠け、自分勝手などと、誤解されてしまい、叱責(しっせき)や体罰、さらにはいじめの対象となってしまうことも多くあり、それがまた、不登校など、新たな問題を招いていた。

 持って生まれた資質がどのようなものであれ、人としての持ち味は、育ちの中でこそ形成されていく。子どもは一人一人大きな可能性を秘めた存在だ。出来ないことばかりを嘆かれたり、けなされたりするのではなく、良さをほめられ、存在を肯定されて育っていってほしい。なぜなら、周囲と和やかな関係を持ち、自分を大切な存在と感じられている子どもは、実にそれだけで周りに恵みを振りまく存在になる。それに、人生とは一筋縄に行かないものだから、弱みと思っていたことが、案外強みになったり、魅力に見えてきたりすることもあるのだ。

 京都でも、平成15年からの準備期間を経て、学校が随分変わってきたと感じている。特別支援教育とは、専門的な視点とスキルを持つことで、子ども一人一人の個性を正しくつかみ、結果的に、すべての子どもたちの健やかな心の発達を保障するものである。


さだもと ゆきこ氏 1960年岡山県生まれ。奈良県立医科大卒業。淀川キリスト教病院などの臨床研修を経て、京都大学病院精神科入局。91年から京都少年鑑別所勤務。著書に「子どもの姿と大人のありよう」「子どもの心百科」(以上共著)など。